子猫を迎えたら、まず考えたいのがワクチン接種です。でも、動物病院で「3種と5種、どちらにしますか?」と聞かれても、違いがよくわからない。完全室内飼いだから、ワクチンはいらないのでは?毎年打たないといけないの?費用はどのくらい?……。猫のワクチンについて、疑問を持っている飼い主は多いのではないでしょうか。
猫のワクチンは、命に関わる感染症から猫を守るための、大切な予防手段です。結論からお伝えすると、すべての猫にすすめられているのは「3種混合ワクチン」で、外に出る猫や多頭飼いの猫など、感染のリスクが高い場合に、ほかのワクチンを追加するのが基本的な考え方です。
この記事では、ワクチンで防げる病気、3種・5種などの違い、室内飼いでもワクチンが必要な理由、子猫期の接種スケジュール、費用の目安、副反応と接種前後の注意点、そして毎年打つべきか3年ごとでよいかの考え方まで、図解を交えてわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- ワクチンで防げる病気と、3種・5種などの違い
- 完全室内飼いでもワクチンが必要な理由
- 子猫期の接種スケジュールと、その後の接種間隔
- ワクチンの費用の目安
- 副反応と、接種前後に気をつけたいこと
結論:3種を基本に、生活環境で追加を考える
猫のワクチンは、大きく2つに分けて考えられています。
- コアワクチン:生活環境に関係なく、すべての猫に接種がすすめられるワクチン。3種混合ワクチンに含まれる3つの病気が該当する
- ノンコアワクチン:外に出る、多頭飼いなど、感染のリスクに応じて接種を検討するワクチン。猫白血病ウイルスなど
完全室内飼いで1匹だけ飼っている場合は、3種混合ワクチンで十分なことが多いです。一方、外に出る機会がある猫、多頭飼いで新しい猫が出入りする家庭、ペットホテルをよく利用する猫などは、猫白血病ウイルスなどを含むワクチンを検討する価値があります。
子猫期には、2〜3回の接種が必要です。その後は、生活環境や健康状態に合わせて、1〜3年ごとに追加接種を行います。どのワクチンを、どのくらいの間隔で打つかは、猫の暮らし方を伝えたうえで、かかりつけの獣医師と相談して決めましょう。
ワクチンで防げる主な病気
猫のワクチンで予防できる主な病気は、次のとおりです。

猫汎白血球減少症は、猫パルボウイルスによる感染症で、激しい下痢や嘔吐、白血球の減少を起こします。子猫がかかると、命を落とすことが多い、とても怖い病気です。このウイルスは環境中で長く生き残り、人の靴や服について家の中に持ち込まれることもあります。
猫ウイルス性鼻気管炎と猫カリシウイルス感染症は、いわゆる「猫風邪」の原因となるウイルスです。くしゃみ、鼻水、目やに、発熱などの症状が出て、カリシウイルスでは口内炎ができることもあります。子猫やシニア猫では重症化することがあり、一度かかるとウイルスが体に潜み続け、ストレスなどで再び症状が出ることもあります。
この3つの病気は、感染力が強く、室内飼いの猫でも感染する可能性があるため、すべての猫にワクチンの接種がすすめられています。
猫白血病ウイルス感染症は、感染している猫とのけんかや、毛づくろい、食器の共有などでうつる病気です。感染すると、免疫が落ちたり、貧血やリンパ腫などの病気を引き起こしたりすることがあります。外に出る猫や、感染している猫と一緒に暮らす可能性がある猫では、ワクチンを検討しましょう。
3種・4種・5種・7種の違い
猫の混合ワクチンは、予防できる病気の数によって「3種」「4種」「5種」「7種」などと呼ばれます。
| 種類 | 予防できる病気 | 向いている猫 |
|---|---|---|
| 3種混合 | 猫汎白血球減少症、猫ウイルス性鼻気管炎、猫カリシウイルス感染症 | すべての猫。完全室内飼いの1匹飼いならこれで十分なことが多い |
| 4種混合 | 3種+猫白血病ウイルス感染症 | 外に出る猫、多頭飼い |
| 5種混合 | 4種+クラミジア感染症 | 外に出る猫、猫の出入りが多い環境 |
| 7種混合 | 5種+カリシウイルスの別の型2種 | 感染リスクの高い環境の猫 |
予防できる病気の数が多いほど良い、というわけではありません。ワクチンの種類が増えると、そのぶん副反応が出る可能性も少しずつ高くなると考えられています。猫の生活環境に合わせて、必要なワクチンを選ぶことが大切です。
なお、猫白血病ウイルスを含むワクチンを初めて接種する場合は、事前に血液検査で、すでにウイルスに感染していないかを確認することがあります。保護猫など、過去の経歴がわからない猫を迎えた場合は、猫エイズウイルスとあわせて検査を受けておくと安心です。
完全室内飼いでもワクチンが必要な理由
「うちの猫は外に出ないから、ワクチンはいらないのでは?」と考える飼い主も少なくありません。しかし、完全室内飼いの猫でも、3種混合ワクチンの接種はすすめられています。その理由は次のとおりです。
- ウイルスを人が持ち込む:猫汎白血球減少症のウイルスは、人の靴や服について家の中に入ってくることがある
- 脱走の可能性:ほんの一瞬の脱走で、外の猫と接触することがある
- 動物病院やペットホテル:ほかの猫が集まる場所で、感染する機会がある
- 新しい猫を迎える:多頭飼いで新しい猫が来たときに、ウイルスを持ち込むことがある
- 災害時の避難:避難所でほかの動物と一緒に過ごすことがある
- 網戸越しの接触:外の猫と網戸越しに鼻をくっつけて、猫風邪がうつることも
特に、猫汎白血球減少症のウイルスは、とても生命力が強く、環境中で長い期間生き残るといわれています。飼い主が外で知らないうちにウイルスを踏み、そのまま家に持ち帰ってしまうことも考えられます。一度感染すると、特に子猫では命に関わることが多いため、室内飼いでもワクチンでしっかり予防しておくことが大切です。
また、ペットホテルやトリミングサロンの中には、ワクチン接種の証明書の提示を求めるところもあります。万一の災害時に、ペット同伴の避難所で受け入れてもらうためにも、ワクチン接種の記録を残しておくと安心です。
ワクチンの接種スケジュール
子猫は、生まれてしばらくの間、母猫の初乳からもらった免疫(移行抗体)で守られています。しかし、この免疫は生後数週間から数か月で少しずつ減っていき、やがて感染症から身を守れなくなります。そのため、子猫期にワクチンを接種して、自分の力で免疫をつくる必要があります。

子猫期に複数回の接種が必要なのは、母猫からもらった免疫が残っている間は、ワクチンの効果が十分に出ないことがあるためです。母猫からの免疫がいつ切れるかは子猫によって違うため、数週間おきに何度か接種して、確実に免疫をつけられるようにしています。最後の接種は、母猫の免疫がほぼなくなる生後16週以降に行うのが一般的です。
子猫期の接種のあと、生後6か月から1歳ごろにもう一度追加接種を行い、免疫をしっかり固めます。その後の接種間隔は、生活環境や健康状態に合わせて、1〜3年ごとに行うのが一般的です。
ワクチンの効果が十分に出るまでは、ほかの猫との接触を避け、外に連れ出さないようにしましょう。子猫期のスケジュールは、迎える前の接種歴によっても変わるので、ブリーダーや保護団体から受け取ったワクチンの記録を、必ず動物病院に持っていきましょう。
ワクチンの費用
ワクチンの費用は、動物病院によって違いますが、一般的な目安は次のとおりです。
| 種類 | 1回あたりの費用の目安 |
|---|---|
| 3種混合ワクチン | 3,000〜5,000円程度 |
| 4種・5種混合ワクチン | 5,000〜1万円程度 |
| 7種混合ワクチン | 7,000〜1万円程度 |
| 猫白血病・猫エイズの検査 | 数千円程度(初めて白血病を含むワクチンを打つ前など) |
| 診察料 | 1,000〜2,000円程度(ワクチン代に含まれることも) |
子猫期は2〜3回の接種が必要になるため、最初の年は合計で1万〜2万円ほどかかることが多いです。ワクチンは病気の予防のためのものなので、ペット保険の補償の対象外になっていることがほとんどです。子猫を迎えるときの費用として、あらかじめ予算に入れておきましょう。
ワクチンの費用だけを見ると、決して安くはないかもしれません。しかし、猫汎白血球減少症や猫風邪にかかると、入院や長期の治療が必要になり、数万円から十数万円の治療費がかかることもあります。何より、猫の命を守るためにも、ワクチンによる予防は大切です。猫の飼育費用全体は「猫の飼育費用はいくら?」で紹介しています。
接種前後に気をつけたいこと
ワクチンを安全に接種するために、次のような点に気をつけましょう。
- 体調のよい日に接種する:食欲がない、下痢をしている、元気がないなど、体調が悪いときは日を改める
- 午前中に接種する:副反応が出たときに、その日のうちに病院を受診できるように
- 接種後30分ほどは病院の近くで様子を見る:重い副反応は、接種後すぐに起こることが多い
- 接種当日は安静に:激しい遊びやシャンプーは避け、静かに過ごさせる
- 数日間は様子を見る:食欲や元気、接種した部分の腫れがないかを確認する
- 以前に副反応が出たことがあれば伝える:ワクチンの種類を変えたり、事前に薬を使ったりすることがある
接種の日は、飼い主が家にいて猫の様子を見守れる日を選ぶと安心です。仕事で留守にする日や、旅行の直前などは避けましょう。キャリーの慣らし方は「猫がキャリーを嫌がって病院に行けない!慣れさせる練習法5ステップ」で紹介しています。
副反応と対応
ワクチンは、体に病原体の情報を覚えさせて免疫をつくる仕組みのため、接種後に体が反応して、一時的に体調が変化することがあります。多くは軽いもので、1〜2日でおさまりますが、まれに重い反応が出ることもあります。

よくある反応は、接種した部分が少し腫れたり、さわると痛がったりすること、元気や食欲が少し落ちること、軽い発熱などです。多くの場合、1〜2日で自然に回復するので、静かに休ませて様子を見ましょう。
注意したいのが、アナフィラキシーと呼ばれる強いアレルギー反応です。接種後数分から数時間以内に、顔が腫れる、何度も吐く、下痢をする、呼吸が苦しそう、ぐったりして動かない、歯ぐきが白っぽいなどの症状が出ることがあります。命に関わることもあるので、こうした症状が出たら、すぐに動物病院に連絡してください。接種後30分ほど病院の近くで様子を見るのは、こうした反応にすぐ対応できるようにするためです。
副反応が出たことがある猫は、次回の接種の前に、必ず獣医師に伝えましょう。ワクチンの種類を変えたり、接種の前に薬を使ったりして、副反応を防ぐ工夫をしてもらえます。
注射部位肉腫について
ワクチンなどの注射をした部分に、まれに「注射部位肉腫」と呼ばれる悪性の腫瘍ができることがあります。発生するのは、数千回から1万回の接種に1回程度といわれる、とてもまれなものですが、知っておきたいことの一つです。
- 接種後のしこりに注意:接種部分のしこりが、接種後3か月以上続く場合
- しこりが大きくなっている:接種後1か月たっても大きくなり続けている場合
- しこりの大きさ:直径2cm以上のしこりがある場合
これらに当てはまる場合は、早めに動物病院を受診しましょう。多くの動物病院では、万一腫瘍ができたときに治療しやすいよう、足や背中の決まった場所にワクチンを接種するなどの工夫をしています。どこに接種したかを記録しておき、接種後しばらくは、その部分をときどきさわって確認する習慣をつけておくと安心です。
注射部位肉腫を心配してワクチンを避けるより、ワクチンで防げる病気のリスクのほうがずっと大きいと考えられています。心配なことがあれば、獣医師に相談しながら、猫に合った接種の方法を選びましょう。
毎年打つ?3年ごと?抗体検査という選択肢
成猫になってからのワクチンの接種間隔については、「毎年」とする考え方と、「3年ごと」とする考え方があります。
| 考え方 | 内容 | 向いている猫 |
|---|---|---|
| 毎年接種 | 日本では従来から多い方法 | 外に出る猫、多頭飼い、ペットホテルをよく使う猫 |
| 3年ごとに接種 | 国際的な獣医師団体のガイドラインで、感染リスクの低い猫のコアワクチンの間隔として示されている | 完全室内飼いで、感染リスクの低い猫 |
| 抗体検査で判断 | 血液検査で免疫が残っているかを調べ、必要なときだけ接種 | 副反応が心配な猫、シニア猫、持病のある猫 |
世界小動物獣医師会(WSAVA)のガイドラインでは、感染のリスクが低い猫の場合、コアワクチンは3年に1回程度の接種が示されています。一方、猫風邪のワクチンは効果が続く期間が比較的短いとされ、感染リスクの高い猫では毎年の接種がすすめられることもあります。
抗体検査は、血液検査で、体の中にワクチンによる免疫(抗体)が十分に残っているかを調べる方法です。抗体が十分にあれば、その年のワクチン接種を見送ることができます。副反応が心配な猫や、シニア猫、持病がある猫などでは、抗体検査で判断するのもよい方法です。
どの方法がよいかは、猫の生活環境や健康状態によって変わります。猫の暮らし方を獣医師にくわしく伝えて、相談しながら決めましょう。ワクチンの時期にあわせて、健康診断を受けるのもおすすめです。健康診断については「猫の健康診断は何歳から・いくら?」で紹介しています。
シニア猫・持病のある猫のワクチン
シニア猫や、持病のある猫のワクチン接種は、体の状態を見ながら慎重に判断します。
- 体調が安定しているときに接種する:病気の治療中や、体調が悪いときは見送ることも
- 抗体検査を活用する:必要なときだけ接種して、体への負担を減らす
- 種類を見直す:外に出なくなったシニア猫は、ワクチンの種類を減らすことも検討
- 接種後はよく様子を見る:体力が落ちているため、副反応に注意
年をとると免疫の働きも弱くなり、感染症にかかると重症化しやすくなることがあります。ワクチンを完全にやめるのではなく、猫の体の状態に合わせて、接種の方法を獣医師と相談しましょう。シニア猫の体の変化については「7歳からが分かれ道|シニア猫の見逃しがちな老化サイン」で紹介しています。
ワクチンの記録と証明書の管理
ワクチンを接種すると、多くの動物病院で接種証明書やワクチン手帳を発行してもらえます。この記録は、次のような場面で必要になるので、大切に保管しておきましょう。
- ペットホテル・トリミングサロン:1年以内などの接種証明書の提示を求められることが多い
- 動物病院を変えるとき:これまでの接種歴を伝えることで、適切なスケジュールを立ててもらえる
- 災害時の避難:ペット同伴の避難所で、接種歴の確認を求められることがある
- 次の接種時期の確認:前回いつ、どの種類を打ったかがすぐにわかる
- 副反応の記録:副反応が出た場合は、ワクチンの種類とあわせてメモしておく
証明書はファイルにまとめて保管し、スマートフォンでも写真を撮っておくと、外出先でもすぐに確認できて便利です。ワクチンを打った場所(右後ろ足、左肩など)も記録しておくと、接種部位のしこりを確認するときに役立ちます。
次の接種時期が近づくと、はがきやメールでお知らせしてくれる動物病院もあります。自分でもカレンダーやスマートフォンのリマインダーに登録して、接種を忘れないようにしましょう。
猫のワクチンでよくある質問
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Q保護した子猫のワクチン歴がわかりません。どうすればいいですか?
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A接種歴がわからない場合は、接種していないものとして、子猫期のスケジュールで接種を始めるのが一般的です。成猫の場合も、数週間おきに2回接種してから、その後は定期的な接種に移ることが多いです。猫白血病や猫エイズの検査もあわせて受けておくと安心です。
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Qワクチンを打てば、絶対に病気にならないのですか?
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Aワクチンは、感染を完全に防ぐものではありませんが、感染しにくくしたり、かかっても症状を軽くしたりする効果があります。特に、猫汎白血球減少症のような命に関わる病気では、ワクチンの予防効果はとても大きいと考えられています。
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Q猫エイズのワクチンはありますか?
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A猫エイズ(猫免疫不全ウイルス感染症)のワクチンは、過去に国内でも使われていましたが、現在は取り扱っていない動物病院が多く、流通状況も変わっています。接種を考える場合は、かかりつけの獣医師に確認してください。猫エイズは主に猫同士のけんかによる噛み傷でうつるため、完全室内飼いと、避妊・去勢手術によるけんかの予防が大切です。
まとめ:猫の暮らしに合ったワクチンで、感染症から守ろう
猫のワクチンは、命に関わる感染症から猫を守るための、大切な予防手段です。猫の生活環境に合わせて、必要なワクチンを選びましょう。
- すべての猫にすすめられるのは3種混合ワクチン(コアワクチン)
- 外に出る猫や多頭飼いでは、猫白血病ウイルスを含むワクチンも検討
- 完全室内飼いでも、人がウイルスを持ち込むことがあるため接種がすすめられる
- 子猫期は2〜3回、生後16週以降に最後の接種。その後6か月〜1歳で追加
- 費用は3種で3,000〜5,000円程度。子猫期は合計1万〜2万円ほど
- 接種は体調のよい日の午前中に。接種後30分は病院の近くで様子を見る
その後の接種間隔は、毎年、3年ごと、抗体検査で判断するなど、いくつかの考え方があります。猫の暮らし方を獣医師にくわしく伝えて、猫に合った方法を相談しながら決めていきましょう。子猫を迎えてからの1年間のスケジュールは「子猫を迎えたら最初の1年が勝負|月齢別の食事・ワクチン・しつけスケジュール」で紹介しています。

