「猫はしつけができない」と聞いたことはありませんか。たしかに猫は、犬のように「おすわり」「待て」を教えて、命令に従わせるのは得意ではありません。でも、だからといって、家具での爪とぎや、夜中の大運動会、トイレの失敗をあきらめる必要はありません。
猫のしつけで大切なのは、猫に言うことを聞かせることではなく、猫が困った行動をしなくて済む環境を整えることです。猫の困った行動の多くは、爪とぎや狩り、上下運動といった本能や習性から来ています。その本能を上手に満たしてあげれば、困った行動は自然と減っていきます。
この記事では、猫の飼い主が特に悩みがちなしつけの疑問を25問ピックアップし、ひとつずつ答えていきます。トイレ、爪とぎ、噛み癖、鳴き声、いたずら、お手入れ、多頭飼いなど、テーマ別にまとめているので、気になるところから読んでみてください。くわしい対策を紹介している記事へのリンクもあわせて載せています。
この記事でわかること
- 猫の飼い主が困っている行動のランキング
- どの悩みにも共通する、しつけの3つの基本原則
- トイレ・爪とぎ・噛み癖・鳴き声など、テーマ別の疑問25問への答え
- 悩み別に「まずやること」がわかる早見表
猫のしつけ、みんな何に悩んでいる?
猫の飼い主を対象にしたある民間のアンケート調査では、猫の困った行動として、次のようなものが上位に挙がっていました。

1位の「家具や壁で爪とぎ」は、多くの飼い主が経験している悩みでしょう。2位の「早朝に起こす」や4位の「夜中の大運動会」は、猫が明け方と夕方に活発になる習性を持つことが関係しています。3位の「猫砂をまき散らす」は、排泄物を砂で隠そうとする本能によるものです。
こうして見ると、猫の困った行動の多くは、猫にとってはごく自然な行動だということがわかります。猫は、飼い主を困らせようとしているわけではありません。猫の本能と、人間の暮らしのルールがぶつかったときに、「困った行動」として見えてしまうのです。
同じ調査では、飼い主が行っている対策として、「トイレをこまめに掃除する」「一緒に遊ぶ時間を作る」「適度な食事」「爪とぎを用意しておく」などが挙がっていました。どれも、猫の本能や習性を満たしてあげる対策です。
猫のしつけ3つの基本原則
これから紹介する25の疑問への答えは、ほとんどが次の3つの原則にもとづいています。まずは、この3つを頭に入れておきましょう。

| 場面 | NGな対応 | おすすめの対応 |
|---|---|---|
| 困った行動をしたとき | 叩く、大声で叱る、水をかける | 黙って中断し、代わりの行動に誘導する |
| 望ましい行動をしたとき | 何もしない | すぐにおやつやなでることでほめる |
| やってほしくない場所 | そのたびに追い払う | 物理的に入れない・乗れないようにする |
| 本能による行動 | やめさせようとする | 爪とぎや遊びなど、代わりの方法で満たす |
猫は、叱られても、なぜ叱られたのかを理解するのが苦手です。むしろ、叱った飼い主を怖がるようになったり、飼い主の見ていないところで同じことをするようになったりします。猫のしつけでは、「叱る」よりも「ほめる」と「環境を整える」を中心に考えましょう。
トイレに関する疑問
Q1. トイレ以外でおしっこをするようになりました。しつけ直すべき?
まず疑うべきは、しつけではなく病気です。膀胱炎や尿路結石など、猫はおしっこに関わる病気がとても多く、痛みからトイレ以外で排泄することがあります。トイレに何度も行くのに少ししか出ない、血尿が出るといった場合は、すぐに動物病院へ。病気がなければ、トイレの汚れ、砂の種類、大きさ、置き場所を見直しましょう。原因の見分け方は「猫がトイレ以外でおしっこする原因は?」でくわしく紹介しています。
Q2. 猫砂をトイレの外にまき散らします。
砂をかけて排泄物を隠すのは、猫の本能です。やめさせるのではなく、飛び散りにくい環境を作りましょう。縁の高いトイレやハーフカバー付きのトイレに替える、トイレの前に目の粗いマットを敷く、粒の大きい砂に替える、といった方法があります。トイレが小さいと中で動き回って砂が飛び散りやすいので、猫の体長の1.5倍以上の大きさがあるかも確認してください。
Q3. うんちをしたあと、砂をかけずに出てきます。
砂の感触が気に入らない、トイレが汚れている、トイレが狭いといった理由が考えられます。砂が少なすぎてかけられないこともあるので、5cm前後の深さがあるかも確認しましょう。もともと砂をあまりかけない性格の猫もいるので、ほかに気になる様子がなければ、心配しすぎなくても大丈夫です。
Q4. トイレのすぐ横に置いてあるごはんを食べません。
猫は、排泄する場所と食事をする場所を離したがる動物です。人間もトイレの横で食事をしたくないのと同じですね。ごはんと水は、トイレからできるだけ離れた場所に置いてあげましょう。狭い部屋でも、部屋の反対側に置くなど、できるだけ距離をとるのがポイントです。トイレの置き場所については「猫がトイレを嫌がる原因は環境かも?」で紹介しています。
爪とぎ・家具に関する疑問
Q5. 爪とぎを置いているのに、ソファで爪をとぎます。
爪とぎの素材や形が、猫の好みに合っていない可能性があります。段ボール、麻、カーペットなど素材を変えてみる、縦型と横型の両方を置く、体を伸ばしきれる長さのものを選ぶ、といった工夫をしてみましょう。また、ソファのすぐ横に爪とぎを置くと、そちらを使ってくれることがあります。猫は寝起きに爪をとぐことが多いので、寝床の近くにも置いておくと効果的です。
Q6. カーテンによじ登ります。やめさせる方法は?
高い場所に登りたいのは、猫の本能です。キャットタワーや棚など、登ってもいい高い場所を用意してあげましょう。カーテンは、一時的に束ねておいたり、猫が登りにくい素材に替えたりするのも方法です。家具を守る工夫は「猫にソファやカーテンをボロボロにされる前に」でくわしく紹介しています。
Q7. 爪とぎを嫌がって、爪が伸びたままです。
爪とぎは、古い爪の外側をはがすための行動で、爪を短くするものではありません。室内で暮らす猫は、2〜3週間に1回を目安に、爪切りで先端のとがった部分を切ってあげましょう。爪切りを嫌がる場合は、眠そうにしているときに1本ずつ切るなど、少しずつ慣らしていきます。
噛む・引っかくに関する疑問
Q8. なでていると、急に噛みついてきます。
なでられすぎて、気持ちよかったのが不快に変わったサインです。猫は噛む前に、しっぽをパタパタ振る、背中の皮膚がぴくぴく動く、耳が横に倒れるといったサインを出しています。こうしたサインが見えたら、すぐになでるのをやめましょう。なでる時間を短めにし、猫が喜ぶあごの下や頬を中心になでるのもおすすめです。
Q9. 足首に飛びかかってきて痛いです。
動く足を獲物に見立てた、狩りの遊びです。エネルギーを持て余しているサインでもあるので、毎日じゃらしでしっかり遊んであげましょう。飛びかかられたときは、声を出さずに動きを止めると、猫はつまらなくなってやめることが多いです。くわしい対処法は「猫の噛み癖は直せる!原因別の対処法」で紹介しています。
Q10. 子猫の甘噛みは放っておいても大丈夫?
子猫のうちはかわいくても、そのまま成猫になると、同じ感覚で強く噛むようになります。子猫のうちから、手や指で遊ばせないことが大切です。噛まれたら遊びを中断し、噛んでいいおもちゃに興味を向けさせましょう。けりぐるみなど、思いきり噛んだりけったりできるおもちゃを用意しておくのもおすすめです。
鳴き声・夜の運動会に関する疑問
Q11. 毎朝4時ごろに起こされます。
猫は明け方に活発になる習性があり、お腹もすいてくる時間です。起こされてごはんをあげると、「鳴けばごはんがもらえる」と覚えてしまいます。自動給餌器を使って、決まった時間にごはんが出るようにすると、飼い主を起こす必要がなくなります。寝る前にしっかり遊んで、疲れさせておくのも効果的です。
Q12. 夜中に家じゅうを走り回ります。
いわゆる「夜の運動会」は、昼間に寝ていて、エネルギーがあまっているときによく起こります。寝る前に10〜15分ほどじゃらしで思いきり遊び、そのあとにごはんをあげると、満足して眠りやすくなります。遊び方のコツは「猫がおもちゃで遊ばない原因は?」で紹介しています。
Q13. 夜になると大きな声で鳴き続けます。
かまってほしい、お腹がすいた、発情期、といった理由のほか、シニア猫では認知機能の低下や、甲状腺の病気、高血圧が関係していることもあります。避妊・去勢手術をしていない場合は、手術で落ち着くこともあります。急に夜鳴きが始まったときは、一度動物病院で相談しましょう。原因別の対策は「猫の夜鳴きで眠れない!原因別の対策」で紹介しています。
Q14. 鳴いて要求するたびに応えていいですか?
鳴くたびにごはんやおやつをあげていると、猫は「鳴けば願いがかなう」と学び、どんどん鳴くようになります。要求鳴きには反応せず、鳴きやんで静かになったときにかまってあげるようにしましょう。ただし、体調が悪くて鳴いている場合もあるので、いつもと違う鳴き方には注意してください。
テーブル・キッチン・いたずらに関する疑問
Q15. テーブルやキッチンに乗ってしまいます。
猫は高い場所が好きで、食べ物のにおいにも引き寄せられます。まずは、テーブルやキッチンに食べ物を出しっぱなしにしないことが大切です。そのうえで、近くにキャットタワーや窓辺の棚など、乗ってもいい高い場所を用意しましょう。キッチンは、コンロや包丁など危険が多い場所なので、入れないようにゲートを設置するのも方法です。
Q16. パソコンのキーボードの上に座って邪魔をします。
飼い主の注目が集まっている場所に行きたい、キーボードが温かい、という理由が考えられます。パソコンの横に猫用のベッドやブランケットを置いてあげると、そちらで過ごしてくれることがあります。作業の合間に少し遊んであげるのも効果的です。
Q17. 机の上の物を落として遊びます。
物を落とすのは、好奇心や、飼い主の反応を楽しんでいることが多いです。落とされて困るものは、猫の手の届かない場所に片付けましょう。落としたときに大きな声で反応すると、猫は「これをすると注目してもらえる」と覚えてしまうので、淡々と片付けるのがポイントです。
Q18. ゴミ箱をあさります。
食べ物のにおいに引き寄せられています。ふた付きのゴミ箱に替えるのが一番の対策です。猫が食べると危険なもの(玉ねぎ、チョコレート、鶏の骨、ひもなど)がゴミ箱に入っていることもあるので、あさられない工夫はとても大切です。
お手入れ・通院に関する疑問
Q19. ブラッシングを嫌がって逃げます。
1回で全身をとかそうとせず、背中を数回とかしたらおやつをあげて終わり、というように少しずつ慣らしましょう。ブラシの種類が合っていない、力が強すぎる、といったこともあるので、やわらかいブラシを試してみるのもよい方法です。ブラシの選び方は「猫のブラシはどれを選ぶ?」で紹介しています。
Q20. キャリーを見ると逃げてしまいます。
「キャリー=怖い病院」と覚えてしまっているためです。キャリーをふだんから部屋に出しておき、中でおやつを食べたり昼寝をしたりできるようにすると、少しずつ印象が変わっていきます。練習方法は「猫がキャリーを嫌がって病院に行けない!慣れさせる練習法5ステップ」でくわしく紹介しています。
Q21. 名前を呼んでも来てくれません。
猫は自分の名前をちゃんと聞き分けていることが研究でわかっています。来ないのは、行っても得がないと判断しているからです。呼んで来たら必ずおやつをあげる、という練習を繰り返すと、呼んだら来るようになります。練習方法は「名前を呼んだら来る猫にする方法」で紹介しています。
多頭飼い・来客に関する疑問
Q22. 2匹目を迎えたら、先住猫がシャーシャー怒ります。
新しい猫が来たばかりのころに、先住猫が威嚇するのはよくあることです。いきなり同じ部屋で対面させず、まずは部屋を分けて、においの交換から始めましょう。ドア越し、ゲート越しと段階を踏んで、少しずつ距離を縮めていきます。先住猫のごはんやあいさつを優先することも大切です。手順は「先住猫と新入り猫を仲良くさせる方法」で紹介しています。
Q23. お客さんが来ると隠れて出てきません。
知らない人を警戒するのは、猫にとって自然なことです。無理に引っぱり出さず、隠れていられる場所をそのままにしておいてあげましょう。お客さんには、猫を追いかけたり、のぞき込んだりしないようにお願いしておきます。猫が自分から出てきたら、お客さんにおやつをあげてもらうと、少しずつ「来客=いいこと」と覚えていきます。
シニア猫・その他の疑問
Q24. 年をとってから、トイレを失敗するようになりました。
関節の痛みでトイレの縁をまたぐのがつらい、腎臓病などでおしっこの量が増えて間に合わない、認知機能の低下でトイレの場所がわからない、といった理由が考えられます。しつけの問題ではないので、叱らないでください。入り口の低いトイレに替える、トイレの数を増やす、生活スペースの近くに置くといった工夫をし、動物病院でも相談しましょう。シニア猫の変化については「7歳からが分かれ道|シニア猫の見逃しがちな老化サイン」で紹介しています。
Q25. しつけのために叱るのは、本当にダメですか?
猫を叩いたり、大声で叱ったりするのは、しつけとして効果がないだけでなく、猫との信頼関係を壊してしまいます。猫は、なぜ叱られたのかを理解できず、ただ飼い主を怖がるようになります。危ないことをしそうなときは、短く「ダメ」と声をかけて止める程度にとどめ、すぐに代わりの行動に誘導しましょう。望ましい行動をしたときにほめるほうが、ずっと効果的です。
悩み別・対策の早見表
25の疑問への答えを、悩み別に「まずやること」としてまとめました。いちばん困っている悩みから、取り組んでみてください。

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どの悩みも、一度にすべてを解決しようとする必要はありません。まずは1つの悩みに絞って、環境を少し変えてみる、遊びの時間を増やしてみる、といった小さな工夫から始めましょう。うまくいったら、次の悩みに取り組んでいけば大丈夫です。
しつけがうまくいかないときのチェックポイント
いろいろ試しているのに、なかなか困った行動が減らない。そんなときは、次のポイントを見直してみましょう。どれか1つが原因になっていることがよくあります。
- 家族で対応がばらばらになっていないか:ある人はテーブルに乗るのを許し、別の人はダメと言っていると、猫は混乱する
- 困った行動に反応しすぎていないか:大きな声で反応すると、猫は「注目してもらえた」と感じて繰り返すことがある
- 代わりの方法を用意しているか:「ダメ」と言うだけで、爪とぎや遊び場などの代わりがないと、行動は減らない
- 遊びの時間が足りているか:エネルギーを持て余していると、いたずらや夜の運動会が増える
- ストレスの原因がないか:引っ越し、新しい家族、工事の音など、環境の変化がきっかけになっていることも
- 体の不調が隠れていないか:急に行動が変わったときは、病気や痛みの可能性も考える
猫のしつけは、すぐに結果が出るものではありません。数日で効果が見えなくても、同じ対応を家族みんなで続けることが大切です。それでも改善しない場合や、攻撃的な行動が強い場合は、動物病院や、動物の行動に詳しい獣医師に相談してみましょう。一人で悩まず、専門家の力を借りるのも、猫との暮らしを守るための大切な選択です。
子猫のうちに教えておきたいこと
困った行動の多くは、子猫のうちから少し意識しておくだけで、予防することができます。これから子猫を迎える方や、迎えたばかりの方は、次のことを心がけてみてください。
- 手や足で遊ばせない:人の手を噛んでいいものと覚えさせないよう、遊びは必ずおもちゃで
- 爪とぎの場所を最初に教える:寝床の近くに爪とぎを置き、使ったらほめる
- 体をさわられることに慣れさせる:足先、口、耳、しっぽを少しずつさわり、終わったらご褒美
- キャリーを寝床のひとつにする:部屋に出しておき、通院や災害時に困らないように
- 要求鳴きに毎回応えない:鳴けば願いがかなう、という習慣をつけない
- 乗ってほしくない場所は最初から決める:子猫のうちは許して、大人になってから禁止するのは難しい
子猫は、生後2〜7週ごろの社会化期を中心に、周りの世界のことを急速に学んでいきます。この時期を過ぎても、子猫はまだ柔軟で、新しいことを覚える力を持っています。子猫のうちに身につけた習慣は、大人になってからも続きやすいので、最初のルールづくりを大切にしましょう。子猫の社会化については「子猫の性格は生後2〜7週で決まる?社会化期に慣れさせたい体験リスト」で紹介しています。
まとめ:しつけは「猫が困らない環境づくり」
猫の困った行動の多くは、爪とぎ、狩り、上下運動、明け方の活動といった、猫の本能や習性から来ています。猫は飼い主を困らせようとしているわけではありません。猫の本能を理解し、それを上手に満たしてあげることが、しつけの近道です。
- 叱らずにほめる。望ましい行動のあとには、すぐにご褒美を
- やってほしくないことは、環境を整えて「できない」状態にする
- 爪とぎや遊びなど、本能は代わりの方法で満たしてあげる
- トイレの失敗や急な行動の変化は、まず病気を疑う
- 要求に毎回応えると、その行動が強化されることを覚えておく
- 一度にすべて解決しようとせず、1つずつ取り組む
猫と暮らしていると、思わずため息をつきたくなることもあるでしょう。でも、猫の気持ちや習性を知ると、「困った行動」の見え方が少し変わってくるはずです。猫にとっても飼い主にとっても心地よい暮らしを目指して、できることから少しずつ始めてみてください。

