夜中の2時、3時。静まり返った部屋に、「ニャーオ、ニャーオ」と猫の大きな鳴き声が響く。明け方には顔の上に乗ってきて、ごはんを催促される……。猫の夜鳴きで毎晩眠れず、寝不足に悩んでいる飼い主は少なくありません。
猫の夜鳴きには、必ず理由があります。そして、その理由は猫の年齢によって大きく違います。迎えたばかりの子猫なら不安や空腹、若い成猫なら発情や「かまってほしい」という要求、シニア猫なら甲状腺の病気や高血圧、認知機能の低下といった病気が隠れていることもあります。
この記事では、猫の夜鳴きの原因を年齢別に整理し、原因を見分けるチャート、要求鳴きへの正しい対応、夜の運動会を減らす寝る前のルーティン、シニア猫の病気のサイン、そして夜鳴きを悪化させてしまうNG対応まで、図解を交えてくわしく解説します。
この記事でわかること
- 年齢別の夜鳴きの主な原因
- 原因を見分けるためのチェックポイント
- 要求鳴き・発情・夜の運動会への対策
- シニア猫の夜鳴きに隠れた病気と、認知機能の低下への対応
- 寝る前のルーティンと、やってはいけないNG対応
結論:年齢で原因が違う。シニアの急な夜鳴きはまず病院へ
夜鳴きの対策を考えるときは、まず猫の年齢と、夜鳴きがいつから始まったかを確認しましょう。

子猫や若い成猫の夜鳴きは、環境や接し方を見直すことで改善することが多いです。一方、7歳を過ぎたシニア猫が急に夜鳴きをするようになった場合は、病気が隠れている可能性が高くなります。甲状腺機能亢進症や高血圧、認知機能の低下などは、夜鳴きが最初のサインになることもあります。
「年のせいだから仕方ない」と思わず、まずは動物病院で相談しましょう。病気が原因の場合は、治療によって夜鳴きが落ち着くことも多いのです。
どの年齢でも共通して大切なのは、叱らないことと、鳴いたときに要求に応えないことです。叱ると猫の不安が強くなり、要求に応えると「鳴けば願いがかなう」と覚えて、夜鳴きがどんどんひどくなってしまいます。
夜鳴きの原因を見分けるチャート
夜鳴きの原因は、一つとは限りません。次のチャートを参考に、上から順番に当てはまるものを確認してみましょう。

原因を見分けるためには、夜鳴きの様子をよく観察することが大切です。次のようなことをメモしておくと、原因を探るヒントになり、動物病院で相談するときにも役立ちます。
- 夜鳴きが始まったのはいつからか。そのころに何か変化はあったか
- 何時ごろに鳴くことが多いか。毎晩同じ時間か
- どこで鳴いているか。寝室の前、ごはんの場所、部屋の隅など
- 鳴いているときに、何かを求めている様子はあるか
- 昼間の様子はどうか。寝てばかりか、活発か
- 食欲、水を飲む量、体重、トイレの様子に変化はないか
たとえば、毎朝4時ごろにごはんの場所で鳴くなら、空腹や要求鳴きの可能性が高いでしょう。部屋の隅でぼんやりしながら鳴いている、壁に向かって鳴いている、といった場合は、認知機能の低下が関係しているかもしれません。よく食べるのに痩せてきた、水をたくさん飲むようになった、といった変化があれば、病気を疑って早めに受診しましょう。
いくつかの原因が重なっていることもあります。たとえば、シニア猫が病気で落ち着かず、さらに鳴けば飼い主が来てくれると覚えて要求鳴きも増えている、というケースです。一つの対策で改善しない場合は、ほかの原因も考えてみてください。
子猫の夜鳴き:不安・空腹・寒さ
迎えたばかりの子猫が夜に鳴くのは、とてもよくあることです。母猫や兄弟猫と離れ、知らない場所で一人で過ごす夜は、子猫にとって心細いものです。
- 不安:母猫や兄弟のにおいがなく、さみしくて鳴く
- 空腹:子猫は一度にたくさん食べられないため、夜中にお腹がすく
- 寒さ:体温調節が苦手で、寒いと鳴いて知らせる
- トイレ:トイレの場所がわからない、トイレが汚れている
子猫の夜鳴きには、安心できる寝床を用意してあげることが大切です。元の家で使っていたタオルや毛布があれば、寝床に入れてあげましょう。自分のにおいや、母猫のにおいがついたものがあると、落ち着きやすくなります。
子猫は、1日に何回かに分けてごはんを食べる必要があります。寝る前にごはんをあげ、明け方にお腹がすかないよう、自動給餌器を使うのもよい方法です。寝床は暖かくし、寒い季節はペット用のヒーターなどで温度を保ちましょう。多くの子猫は、新しい環境に慣れると、数日から数週間で夜鳴きが落ち着いていきます。子猫の夜鳴きは、成猫の要求鳴きとは違い、不安や体の不調を知らせているサインのことが多いので、最初のうちは鳴いたら様子を見に行き、寝床や室温、トイレに問題がないかを確認してあげましょう。
成猫の要求鳴き:応えずに、先に満たす
若い成猫の夜鳴きで最も多いのが、要求鳴きです。「ごはんがほしい」「遊んでほしい」「ドアを開けてほしい」といった要求を、鳴いて飼い主に伝えているのです。
要求鳴きで大切なのは、鳴いたときに要求に応えないことです。夜中に鳴かれて、仕方なくごはんをあげたり、起きて遊んであげたりすると、猫は「鳴けば願いがかなう」と学習します。一度覚えてしまうと、次からはもっと大きな声で、もっと長く鳴くようになります。
- 鳴いても反応しない:声をかけたり、目を合わせたりするのも反応のうち。寝たふりを続ける
- 静かになったら応える:鳴きやんで落ち着いたときに、なでたり声をかけたりする
- 要求を先に満たしておく:寝る前にしっかり遊び、ごはんをあげておく
- 明け方のごはんは自動給餌器に:飼い主を起こしてもごはんは出てこない、と覚えてもらう
- 家族全員で同じ対応をする:一人でも応えてしまうと、要求鳴きは続く
要求鳴きを無視し始めると、最初の数日は、かえって鳴き声が大きくなったり、長くなったりすることがあります。これは「いつもは鳴けば来てくれたのに、来ない。もっと鳴いてみよう」という反応で、一時的なものです。ここで根負けして応えてしまうと、「もっと大きな声で鳴けば来てくれる」と学んでしまいます。つらいですが、数日から1〜2週間は根気よく続けましょう。
ただし、無視するのは「要求鳴き」だけです。いつもと違う鳴き方をしている、苦しそうにしている、といった場合は、体調が悪い可能性もあるので、様子を確認してください。
発情による夜鳴き
避妊・去勢手術をしていない猫は、発情期になると、大きな声で鳴き続けることがあります。特にメス猫の発情期の鳴き声は、赤ちゃんの泣き声のように大きく、昼夜を問わず続くため、飼い主も眠れなくなってしまいます。
| 比較 | メス | オス |
|---|---|---|
| 鳴き方 | 低く大きな声で鳴き続ける | メスの声やにおいに反応して鳴く |
| ほかの行動 | 床を転がる、お尻を上げる、体をこすりつける | スプレー行動、外に出たがる |
| 時期 | 日照時間が長くなる春ごろから多くなる | 近くに発情したメスがいると起こる |
発情による夜鳴きは、避妊・去勢手術をすることで、ほとんどの場合なくなります。発情期の猫は、異性を求めて脱走しようとすることもあるため、脱走防止の面でも手術を検討しましょう。手術の時期や費用については「猫の去勢・避妊手術はいつがベスト?」で紹介しています。
避妊・去勢手術をした猫でも、外にいる発情した猫の鳴き声やにおいに反応して、落ち着かなくなることがあります。窓を閉める、カーテンで外が見えないようにするなど、外からの刺激を減らしてあげましょう。
夜の運動会とエネルギーのあまり
夜中に家じゅうを走り回ったり、鳴きながら飼い主を起こしに来たりする、いわゆる「夜の運動会」も、多くの飼い主を悩ませています。
猫は、明け方と夕方の薄暗い時間帯に活発になる薄明薄暮性の動物です。野生では、獲物が活動するこの時間帯に狩りをしていました。室内で暮らす猫にもこの習性は残っていて、飼い主が眠っている明け方に、活動のピークがやってくるのです。
さらに、飼い主が仕事などで留守にしている昼間、猫はずっと寝て過ごしています。エネルギーをたっぷりためた状態で夜を迎えるため、飼い主が寝静まったころに、元気があり余って走り回ったり、鳴いて遊びに誘ったりするのです。
- 寝る前にしっかり遊ぶ:10〜15分ほど、息が少し上がるくらいまで思いきり遊ぶ
- 帰宅後にも遊ぶ時間をつくる:夕方から夜にかけて、何回かに分けて遊ぶ
- 留守中の退屈を減らす:知育トイ、窓辺の見張り台、キャットタワーなどを用意する
- 昼間に少し起こす:休日の昼間に遊ぶ時間をつくり、生活リズムを整える
猫と遊ぶ時間が足りていないと、エネルギーが夜鳴きや夜の運動会に向かいやすくなります。遊び方のコツは「猫がおもちゃで遊ばない原因は?年齢別おすすめおもちゃと遊ばせ方」で紹介しています。
寝る前のルーティンで夜鳴きを減らす
要求鳴きや夜の運動会を減らすのに効果的なのが、毎晩同じ時間に行う寝る前のルーティンです。

野生の猫は、獲物を狩り、それを食べ、毛づくろいをしてから眠ります。この「狩る→食べる→毛づくろい→眠る」という流れを、寝る前に再現してあげるのがポイントです。じゃらしで思いきり遊んで狩りの欲求を満たし、そのあとにごはんをあげると、猫は満足して毛づくろいを始め、そのままぐっすり眠ることが多くなります。
明け方にごはんを催促して鳴く猫には、自動給餌器が役立ちます。決まった時間にごはんが出るように設定しておけば、猫は「飼い主を起こさなくても、時間になればごはんが出てくる」と覚えていきます。給餌器の選び方は「自動給餌器があれば猫の留守番も安心?」で紹介しています。
ルーティンは、毎晩できるだけ同じ時間に行うことが大切です。猫は習慣を大切にする動物なので、毎日同じ流れを繰り返すことで、夜は眠る時間だというリズムが身についていきます。
シニア猫の夜鳴きに隠れた病気
7歳を過ぎたシニア猫が、急に夜鳴きをするようになった場合は、病気が原因になっていることが少なくありません。次のような病気が夜鳴きに関係していることがあります。
| 病気 | 夜鳴き以外のサイン |
|---|---|
| 甲状腺機能亢進症 | よく食べるのに痩せる、活発になる、水をよく飲む、吐く、毛づやが悪い |
| 高血圧 | 瞳孔が開いたまま、目が見えにくそう、ふらつく |
| 慢性腎臓病 | 水をよく飲む、おしっこが増える、食欲が落ちる、痩せる |
| 関節炎などの痛み | 高い所に登らない、動きがゆっくり、さわると嫌がる |
| 目や耳の衰え | 物にぶつかる、呼んでも反応しない、声が大きくなる |
| 認知機能の低下 | 昼夜逆転、ぼんやりする、家の中で迷う、トイレの失敗 |
甲状腺機能亢進症は、中高齢の猫に多い病気で、甲状腺ホルモンが過剰に出ることで、体の代謝が高まり、落ち着きがなくなります。夜も眠れずに鳴き続けることがあり、「年をとったのに、急に元気になった」と勘違いされることもあります。血液検査で診断でき、薬や療法食で治療できます。
高血圧は、腎臓病や甲状腺の病気にともなって起こることが多く、目の網膜がはがれて突然目が見えなくなることもあります。目が見えなくなった不安から、夜に鳴くようになる猫もいます。
耳が遠くなった猫は、自分の声が聞こえにくくなるため、鳴き声が大きくなることがあります。暗い夜に周りがよく見えず、不安になって飼い主を呼んでいることもあります。
これらの病気は、健康診断で見つかることが多いものです。シニア期には年2回の健康診断を受け、夜鳴きが始まったら次の健診を待たずに相談しましょう。シニア猫の変化については「7歳からが分かれ道|シニア猫の見逃しがちな老化サイン」で紹介しています。
認知機能の低下による夜鳴きへの対応
猫も年をとると、人間の認知症に似た「認知機能不全症候群」になることがあります。11〜14歳の猫の約3割、15歳以上の猫の約半数に、認知機能の低下の兆候が見られるという報告もあります。夜鳴きは、その代表的な症状のひとつです。
認知機能の低下が原因の夜鳴きには、次のような対応が役立ちます。
- 夜も小さな明かりをつけておく:真っ暗だと不安が強くなることがある。足元灯や豆電球を
- 家具の配置を変えない:慣れた環境のほうが、迷わず安心して過ごせる
- 昼間に適度な刺激を与える:日光浴や軽い遊びで、昼夜のリズムを整える
- トイレや寝床を近くに:迷わずたどり着けるよう、生活スペースをコンパクトに
- 鳴いたらそっと声をかける:不安で鳴いている場合は、飼い主の声やなでることで落ち着くことも
要求鳴きとは違い、認知機能の低下による夜鳴きは、猫が不安や混乱を感じて鳴いていることが多いものです。完全に無視するのではなく、そっと声をかけたり、なでたりして、安心させてあげることが大切です。
獣医師と相談して、脳の健康をサポートするサプリメントや、療法食を取り入れる方法もあります。夜鳴きがひどく、猫も飼い主も眠れない状態が続く場合は、猫の睡眠を助ける薬を処方してもらえることもあります。一人で抱え込まず、動物病院で相談しましょう。
絶対にやってはいけない対応
夜鳴きが続くと、寝不足でイライラしてしまうこともあるでしょう。しかし、次のような対応は、夜鳴きをかえって悪化させてしまいます。
| NGな対応 | なぜダメなのか |
|---|---|
| 叱る・大声を出す | 猫は理由がわからず、不安が強くなってさらに鳴く |
| 叩く・水をかける | 飼い主を怖がるようになり、信頼関係が壊れる |
| 鳴くたびにごはんをあげる | 「鳴けばごはんがもらえる」と学習する |
| ときどき根負けして応える | 「鳴き続ければいつかは来る」と学び、より強く鳴くようになる |
| 病気を疑わずに放置する | シニア猫では治療できる病気を見逃すことがある |
特に気をつけたいのが、ときどき根負けして応えてしまうことです。毎回応えるよりも、たまに応えるほうが、猫は「あきらめずに鳴き続ければ、いつかは来てくれる」と強く学習してしまいます。要求鳴きには、家族全員で一貫して応えないことが大切です。
叱ったり、叩いたりしても、猫は夜鳴きをやめることはありません。むしろ、飼い主を怖がるようになり、ストレスでさらに鳴くようになることもあります。夜鳴きには、原因を見つけて、それに合った対策をとることが一番の近道です。
飼い主の睡眠を守る工夫
夜鳴きの対策は、効果が出るまでに時間がかかることもあります。その間、飼い主が寝不足で体調を崩してしまっては大変です。猫の気持ちに配慮しながら、飼い主の睡眠を守る工夫も取り入れましょう。
- 寝室のドアの前で鳴く場合:猫を寝室に入れて一緒に寝るか、ドアを閉めて寝室以外で過ごさせるかを決め、毎晩同じにする
- 耳栓やホワイトノイズを使う:要求鳴きを無視する期間を乗り切るのに役立つ
- 家族で交代する:夜鳴きがひどい時期は、家族で寝る部屋を交代するなど負担を分け合う
- 休日に昼寝をする:睡眠不足をためこまないようにする
猫を寝室に入れるかどうかは、家庭によって考え方が違います。一緒に寝ると安心して静かに眠る猫もいれば、寝室に入ると飼い主の顔の上を歩き回って起こしてしまう猫もいます。どちらにするにしても、日によって対応を変えず、毎晩同じにすることが大切です。「昨日は入れてくれたのに、今日は入れてくれない」となると、猫は入れてもらえるまで鳴き続けるようになります。
ただし、猫を狭いケージやトイレのない部屋に長時間閉じ込めるのはやめましょう。ストレスで夜鳴きがひどくなったり、トイレを我慢して体調を崩したりすることがあります。
猫の夜鳴きでよくある質問
-
Q夜鳴きを無視し続けて、猫がかわいそうではありませんか?
-
A無視するのは、ごはんや遊びを求める「要求鳴き」の場合だけです。その代わりに、寝る前にしっかり遊び、ごはんをあげて、猫の欲求を先に満たしておくことが大切です。不安や病気が原因の夜鳴きは無視せず、原因に合った対応をしましょう。
-
Q引っ越ししてから夜鳴きが始まりました。
-
A新しい環境への不安から、夜鳴きをすることはよくあります。使い慣れた寝床や毛布、トイレを用意し、まずは1部屋から慣らしていきましょう。多くの場合、数日から数週間で新しい家に慣れて、夜鳴きも落ち着いていきます。長く続く場合は、ほかの原因も考えてみてください。
-
Qまたたびを与えると、夜鳴きがおさまりますか?
-
Aまたたびで一時的に興奮したあと、落ち着いて眠る猫もいますが、反対に興奮して騒いでしまう猫もいます。夜鳴きの根本的な解決にはならないので、原因に合った対策を優先しましょう。与える場合は少量にとどめてください。
まとめ:原因を見極めて、猫も飼い主もぐっすり眠ろう
猫の夜鳴きには、必ず理由があります。年齢や夜鳴きの様子から原因を見極め、それに合った対策をとることで、多くの夜鳴きは改善していきます。
- 子猫は不安・空腹・寒さ、成猫は発情・要求・エネルギーのあまりが多い
- シニア猫の急な夜鳴きは、甲状腺の病気や高血圧、認知機能の低下を疑って受診を
- 要求鳴きには応えず、静かになったときにかまう。家族全員で一貫して
- 寝る前に「遊ぶ→食べる→眠る」のルーティンを。明け方のごはんは自動給餌器に
- 発情による夜鳴きは、避妊・去勢手術でほとんどなくなる
- 叱る・叩く・ときどき根負けして応えるのはNG
夜鳴きの対策は、効果が出るまでに時間がかかることもあります。焦らず、猫の気持ちに寄り添いながら、根気よく続けていきましょう。猫がぐっすり眠れるようになれば、飼い主もきっと、穏やかな夜を取り戻せるはずです。しつけ全般の疑問は「猫のしつけ、みんな何に悩んでる?飼い主のリアルな疑問25選」でも答えています。

