「元気に見えるし、健康診断はまだいいかな」「そもそも何歳から、いくらくらいかかるの?」。猫の健康診断について、こんな疑問を持っている飼い主は多いのではないでしょうか。ワクチン接種のときに病院へ行くだけで、健康診断は受けたことがないという方も少なくありません。
先に結論をお伝えすると、猫の健康診断は1歳を過ぎたら年1回、7歳を過ぎたら年2回が目安です。費用は、身体検査と血液検査の基本的なコースで5千〜1万円ほど、尿検査やレントゲンなどを加えると1万〜2万円台になるのが一般的です。
猫は体の不調を隠すのがとても上手な動物です。見た目は元気でも、腎臓病や甲状腺の病気が静かに進んでいることがあります。この記事では、年齢別の健康診断の頻度と検査内容、血液検査の数値の見方、費用の目安、受ける前の準備、病院が苦手な猫のストレスを減らすコツまで、図解を交えてわかりやすく解説します。
この記事でわかること
- 猫の健康診断は何歳から、どのくらいの頻度で受けるべきか
- 年齢別の検査内容と、主な検査項目でわかること
- 血液検査の数値の見方
- 健康診断の費用の目安
- 受ける前の準備と、病院嫌いの猫への対処法
結論:1歳から年1回、7歳を過ぎたら年2回
猫の健康診断の頻度と費用の目安を、まずは表で整理しておきましょう。
| 年齢 | 頻度の目安 | 主な検査 | 費用の目安(1回) |
|---|---|---|---|
| 子猫(〜1歳) | ワクチン接種のたび | 身体検査、検便 | 診察料の範囲が中心 |
| 成猫(1〜6歳) | 年1回 | 身体検査、血液検査、尿検査 | 1万〜2万円程度 |
| シニア(7〜10歳) | 年2回 | 上記+SDMA、甲状腺ホルモン | 1.5万〜2.5万円程度 |
| 高齢(11歳〜) | 年2〜3回 | 上記+レントゲン、エコー、血圧 | 2万〜3万円以上 |
費用は病院や地域、検査の内容によって大きく変わるため、あくまで目安として考えてください。大切なのは、元気なうちから定期的に検査を受けて、その猫にとっての「健康なときの数値」を知っておくことです。基準となる数値があれば、少しの変化にも気づきやすくなり、病気の早期発見につながります。
猫に健康診断が必要な理由
猫の祖先は、単独で狩りをして暮らしていました。弱っている姿を見せると、ほかの動物に襲われる危険があるため、体の不調をできるだけ隠す習性が身についたといわれています。そのため、飼い主が「なんだか元気がない」と気づいたときには、病気がかなり進んでいることも珍しくありません。
代表的なのが慢性腎臓病です。腎臓は、機能の多くが失われるまで目に見える症状が出にくい臓器です。水をたくさん飲む、おしっこの量が増えるといった症状に気づいたときには、すでに腎臓の働きがかなり落ちていることがあります。健康診断で血液や尿を調べれば、見た目ではわからない段階で異常を見つけられる可能性があります。
また、猫は人よりもずっと速いスピードで年をとります。一般的に、猫は生後1年半ほどで人の20歳前後に成長し、その後は1年に人のおよそ4歳分ずつ年をとるといわれています。年に1回の健康診断は、人に置き換えると4年に1回の健診ということになります。シニア期に年2回をすすめるのは、このためです。
- 猫は不調を隠す:症状が出たときには病気が進んでいることが多い
- 年をとるスピードが速い:1年で体の状態が大きく変わることがある
- 早期発見で選べる治療が増える:食事療法など、体への負担が少ない方法で進行を遅らせられることも
- 健康なときの数値がわかる:その猫にとっての基準ができ、変化に気づきやすくなる
健康診断は、病気を見つけるためだけのものではありません。体重や体型、歯の状態、食事の内容などについて、獣医師に相談できる貴重な機会でもあります。ふだん気になっていることをメモしておき、健康診断のときにまとめて聞いてみましょう。
年齢別の健康診断の頻度と内容
健康診断で受けるべき検査は、猫の年齢によって変わります。若いうちは基本的な検査を中心に、年齢が上がるにつれて、シニア猫に多い病気を見つけるための検査を追加していきます。

子猫期は、ワクチン接種で動物病院に行く機会が多いので、そのたびに体重や全身の状態をチェックしてもらいましょう。お腹の虫がいないかを調べる検便や、避妊・去勢手術の前の血液検査も、この時期の大切な検査です。
成猫期は、病気が少ない時期ですが、年に1回は血液検査と尿検査を受けておくと安心です。この時期の数値が、将来シニアになったときの比較の基準になります。
シニア期からは、腎臓病や甲状腺機能亢進症など、年齢とともに増える病気のリスクが高まります。年2回の健康診断で、腎臓の働きを早い段階で調べられるSDMAや、甲状腺ホルモンの検査を追加しましょう。
高齢期には、心臓病や腫瘍、高血圧なども増えてきます。血液や尿の検査に加えて、レントゲンやエコーで内臓の状態を確認したり、血圧を測ったりすることも検討しましょう。
主な検査項目とわかること
健康診断では、いくつかの検査を組み合わせて、全身の状態を調べます。それぞれの検査で何がわかるのかを知っておくと、どのコースを選ぶか考えるときに役立ちます。
| 検査 | 内容 | わかること |
|---|---|---|
| 身体検査 | 体重、体温、心音、目・耳・口・皮膚、お腹のさわり具合 | 肥満や痩せ、歯周病、心雑音、しこりなど |
| 血液検査 | 血球検査と生化学検査 | 腎臓・肝臓の働き、糖尿病、貧血、炎症など |
| 尿検査 | 尿の濃さ、たんぱく、糖、結晶など | 腎臓病、膀胱炎、尿路結石、糖尿病など |
| 便検査 | 寄生虫の卵や、便の状態 | お腹の虫、腸の炎症など |
| レントゲン | 胸やお腹の撮影 | 心臓の大きさ、肺、結石、腫瘍など |
| エコー(超音波) | お腹や心臓を画像で確認 | 腎臓や肝臓の形、心臓の動き、腫瘍など |
このうち、健康診断の中心になるのは、身体検査・血液検査・尿検査の3つです。特に尿検査は、猫に多い腎臓病や膀胱炎、尿路結石の早期発見にとても役立ちます。尿の濃さが薄くなってくるのは、腎臓の働きが落ち始めているサインのひとつで、血液検査より早く変化が表れることもあります。
レントゲンやエコーは、シニア期以降に追加することが多い検査です。心臓病は、見た目にはほとんど症状が出ないまま進むことがあり、身体検査で心雑音が見つかった場合などには、エコーでくわしく調べることがあります。
血液検査の主な項目と数値の見方
健康診断の結果として渡される血液検査の表には、アルファベットの略語や数字がたくさん並んでいて、見方がわからないという方も多いでしょう。すべてを覚える必要はありませんが、よく出てくる項目を知っておくと、獣医師の説明が理解しやすくなります。

猫の健康診断で特に大切なのが、腎臓に関わる項目です。これまで腎臓の働きを調べる代表的な項目は、BUN(尿素窒素)とクレアチニンでしたが、これらは腎臓の機能がかなり低下するまで数値が上がりにくいという弱点があります。SDMAは、それより早い段階で腎臓の働きの低下を知る手がかりになる項目として、シニア猫の健康診断で広く使われるようになっています。
ただし、SDMAは筋肉量の影響を受けにくい一方で、ほかの要因でも数値が変わることがあります。どの数値も、1回の結果だけで判断せず、過去の結果との比較や、ほかの検査の結果とあわせて総合的に判断することが大切です。
血糖値は、猫が病院で緊張したり興奮したりすると、一時的に高くなることがあります。1回の検査で血糖値が高かったからといって、すぐに糖尿病とは限りません。気になる結果が出たときは、再検査が必要かどうかを獣医師に確認しましょう。
健康診断の費用の目安
猫の健康診断は、多くの場合、ペット保険の補償対象外で、全額自己負担になります。費用は病院によってさまざまですが、多くの病院では、検査内容に応じていくつかのコースが用意されています。

これとは別に、診察料として1,000〜3,000円ほどかかることがあります。また、鎮静が必要な検査や、特殊なホルモン検査を追加すると、そのぶん費用は上がります。予約のときに、コースの内容と金額、追加検査の料金を確認しておきましょう。
動物病院によっては、春や秋などに「健康診断キャンペーン」を行い、通常より安い料金で検査を受けられることがあります。かかりつけの病院のホームページや院内の掲示をチェックしてみてください。
健康診断の費用は決して安くありませんが、病気が進んでから治療を始めると、通院や入院、手術などで何万円、何十万円とかかることもあります。早期発見によって、食事療法など負担の少ない方法で病気の進行を遅らせられれば、結果的に医療費を抑えられることもあります。猫の飼育にかかる費用全体は「猫の飼育費用はいくら?」で、保険の考え方は「猫のペット保険は必要?」で紹介しています。
健康診断で見つかりやすい病気
健康診断では、症状が出る前の段階で、さまざまな病気の手がかりが見つかることがあります。猫の健康診断で見つかることの多い病気には、次のようなものがあります。
- 慢性腎臓病:シニア猫に非常に多い病気。血液検査と尿検査で早期発見をめざす
- 甲状腺機能亢進症:中高齢の猫に多い。よく食べるのに痩せる、活発になるなどの変化も
- 糖尿病:肥満の猫に多い。水をよく飲む、おしっこが増えるといった症状が出る
- 歯周病:3歳以上の猫の多くが歯周病をもつともいわれる。口臭やよだれにも注意
- 心筋症:症状が出にくい心臓の病気。心雑音をきっかけに見つかることがある
- 尿路結石・膀胱炎:尿検査で結晶や血液が見つかることがある
- 肥満:関節の病気や糖尿病などのリスクを高める
これらの病気の多くは、早く見つけて食事や生活を見直すことで、進行をゆるやかにできる可能性があります。健康診断の結果、食事の変更をすすめられることもあるので、フードの選び方についても獣医師に相談してみましょう。食事の基本については「猫の食事と栄養管理の基本」でも解説しています。
次のような様子があるときは、健康診断の時期を待たずに動物病院を受診しましょう。水を飲む量やおしっこの量が急に増えた、食欲があるのに痩せてきた、トイレに何度も行くのに尿が少ししか出ない、丸1日以上ごはんを食べない、呼吸が荒い・口を開けて呼吸している。特に、オス猫で尿がほとんど出ない状態は、尿路が詰まっている可能性があり、命に関わる緊急事態です。
健康診断を受ける前の準備
健康診断を正確に受けるためには、事前の準備も大切です。当日に慌てないよう、次の手順で準備を進めましょう。
- 予約をする:健康診断は予約制の病院が多い。検査内容と費用、絶食の必要があるかを確認
- ごはんを抜く:血液検査の前は、検査の8〜12時間前から絶食するよう指示されることが多い。水は飲ませてよい場合がほとんど
- 尿や便を持っていく:病院の指示に従って、当日の朝の尿や便を清潔な容器に入れて持参
- キャリーに慣らしておく:前日までにキャリーを部屋に出しておき、猫が自由に出入りできるようにする
- 気になることをメモする:食欲、水を飲む量、トイレの回数、体重の変化など
絶食の時間や、尿・便の持って行き方は病院によって違うため、必ず予約のときに確認してください。糖尿病などで薬を飲んでいる猫や、子猫、持病のある猫は、絶食してよいかどうかも獣医師に相談しましょう。
尿を採るのは難しいと感じるかもしれませんが、システムトイレを使っている場合は、下段のシートを裏返して置いておくと、尿がシートに吸収されずにたまり、スポイトで採取できます。普通の猫砂の場合は、砂を少なくして、おしっこをし始めたときにお玉などで受ける方法もあります。どうしても採れない場合は、病院で採尿してもらえることもあるので相談してみてください。
尿は、時間がたつと成分が変化してしまうため、できるだけ採ってから早め(数時間以内)に病院へ持っていくのが理想です。すぐに持っていけない場合は、冷蔵庫で保管しておくよう指示されることもあります。
病院が苦手な猫のストレスを減らすコツ
猫にとって、キャリーに入れられて知らない場所に連れて行かれ、体をさわられる動物病院は、大きなストレスになります。少しでも負担を減らすために、次のような工夫をしてみましょう。
- キャリーをふだんから部屋に置く:「キャリー=病院」ではなく、くつろげる場所にしておく
- 上が開くキャリーを使う:無理に引き出さず、ふたを開けてそのまま診察してもらえる
- キャリーにタオルをかける:待合室で周りが見えないようにすると落ち着きやすい
- 猫の待合室や時間帯を利用する:犬と待合室が分かれている病院や、空いている時間帯を選ぶ
- いつものにおいを持っていく:使い慣れたタオルや毛布をキャリーに入れておく
帰宅後は、猫をそっとしておいてあげましょう。多頭飼いの場合、病院から帰ってきた猫のにおいが変わっていて、ほかの猫が威嚇することがあります。しばらくは別の部屋で落ち着かせてから、ほかの猫と会わせるとトラブルを防げます。
病院で極度に興奮してしまう猫の場合は、事前に獣医師に相談すると、不安をやわらげる薬を処方してもらえたり、自宅への往診を利用できたりすることもあります。無理をせず、その猫に合った方法を探してみましょう。
結果の受け取り方と記録のしかた
健康診断の結果は、当日にその場で説明してもらえることもあれば、外部の検査機関に送るため数日後になることもあります。説明を受けるときは、次の点を確認しておくと、今後のケアに役立ちます。
- 基準範囲から外れている項目はあるか。あればどの程度か
- 前回の結果と比べて、大きく変化している項目はあるか
- 再検査や追加の検査が必要か。必要ならいつ受けるか
- 食事や生活で気をつけることはあるか
- 次の健康診断はいつごろ受けるのがよいか
結果の用紙は、必ず保管しておきましょう。ファイルにまとめたり、スマートフォンで写真を撮って保存したりしておくと、次の健康診断のときに前回との比較がしやすくなります。引っ越しなどで病院を変えることになった場合も、過去の検査結果があれば、新しい病院で猫の状態を正確に伝えられます。
基準範囲から少し外れた数値があっても、すぐに病気というわけではありません。反対に、基準範囲内であっても、前回より大きく変化している場合は注意が必要なこともあります。数値だけを見て一喜一憂せず、獣医師の説明をよく聞いて、次に何をすればよいかを確認しましょう。
ふだんの生活の中で、体重を定期的に量っておくことも大切です。猫の体重が1年で10%以上減っている場合は、何かの病気が隠れている可能性があります。キッチンスケールや、抱っこして人の体重計で量る方法でもかまわないので、月に1回は体重を記録しておきましょう。
かかりつけ医の選び方
健康診断は、毎回同じ病院で受けるのがおすすめです。同じ病院で検査を続けることで、過去のデータと比較しやすくなり、猫の小さな変化にも気づいてもらいやすくなります。
かかりつけの動物病院を選ぶときは、次のような点を参考にしてみてください。
| チェックポイント | 理由 |
|---|---|
| 家から通いやすい距離か | 移動時間が短いほど、猫の負担が少ない |
| 猫の診療に慣れているか | 猫専用の待合室や診察室、猫に配慮した対応がある |
| 説明がわかりやすいか | 検査の目的や結果、費用をていねいに説明してくれる |
| 健康診断のコースがあるか | 年齢に合わせた検査内容を選びやすい |
| 夜間・休日の対応 | 急な体調不良のときの連絡先や、連携する救急病院を確認 |
国際猫医学会(ISFM)が認定する「キャット・フレンドリー・クリニック」のように、猫にやさしい病院づくりに取り組んでいる動物病院もあります。病院選びに迷ったときの参考にしてみるのもよいでしょう。
猫の健康診断でよくある質問
-
Q完全室内飼いでも健康診断は必要ですか?
-
A必要です。室内飼いは感染症やけがのリスクは低くなりますが、腎臓病や甲状腺の病気、心臓病、歯周病などは、室内飼いの猫でも起こります。これらは外に出るかどうかに関係なく、年齢とともに増えていく病気です。
-
Qワクチン接種と一緒に健康診断を受けられますか?
-
A多くの病院で可能です。通院の回数が減るので、猫の負担も少なくなります。ただし、血液検査のために絶食が必要な場合や、体調によってはワクチンを別の日にしたほうがよい場合もあるので、予約のときに相談してください。
-
Q費用を抑えるなら、どの検査を優先すればいいですか?
-
Aまずは身体検査と血液検査、そして比較的安価な尿検査を優先するのがおすすめです。シニア猫ではSDMAや甲状腺ホルモンの検査も大切です。猫の年齢や体の状態によって優先すべき検査は変わるので、予算を伝えたうえで獣医師に相談しましょう。
まとめ:元気なうちから「健康なときの数値」を知っておこう
猫は体の不調を隠す動物です。見た目が元気なうちから健康診断を受け、その猫にとっての健康な状態を知っておくことが、病気の早期発見につながります。
- 健康診断は1歳から年1回、7歳を過ぎたら年2回が目安
- 基本は身体検査・血液検査・尿検査。シニアはSDMAや甲状腺ホルモンも
- 費用は基本コースで5千〜1万円、充実コースで2万円以上が目安
- 血液検査の前は絶食の指示があることが多い。尿は新鮮なものを
- 結果は保管して、前回と比べられるようにしておく
- 毎回同じ病院で受けると、小さな変化にも気づいてもらいやすい
まだ一度も健康診断を受けたことがないなら、次のワクチン接種や、猫の誕生日をきっかけに予約してみてはいかがでしょうか。年に1〜2回の健康診断は、愛猫と少しでも長く一緒に過ごすための、飼い主にできる大切な備えです。

