「こんなに大好きなのに、なぜか猫に避けられてしまう」「家族の中で、自分にだけなついてくれない」「猫好きなのに、猫に好かれた試しがない」。猫と暮らしていると、そんな悩みを感じることがあるかもしれません。
猫に好かれる人と嫌われる人の違いは、猫への愛情の大きさではありません。猫が好きなのは、かまいすぎる人ではなく、自分のペースを尊重してくれる人です。猫は、無理に近づかれたり、追いかけられたりすることを嫌い、自分から近づいていける安心感のある相手を信頼します。よく「猫は猫が苦手な人に寄っていく」といわれるのも、猫が苦手な人は猫に無理に近づかず、じっと見つめることもないからだと考えられています。
この記事では、猫に好かれる飼い主と嫌われる飼い主の違い、研究でわかってきた猫と飼い主の絆、信頼関係を築くための7つの習慣、猫が信頼しているサイン、そして関係がこじれてしまったときの修復方法まで、図解を交えて紹介します。
この記事でわかること
- 猫に好かれる飼い主と嫌われる飼い主の違い
- 研究でわかった、猫と飼い主の絆とゆっくりまばたきの効果
- 信頼関係を築くための7つの習慣
- 猫があなたを信頼しているサイン
- 嫌われてしまったときの関係の修復方法
結論:猫は「距離を尊重してくれる人」を信頼する
猫と信頼関係を築くための基本は、とてもシンプルです。
- 猫から近づいてくるのを待つ:追いかけたり、無理に抱っこしたりしない
- 嫌がることをしない:猫が嫌がったら、すぐにやめる
- 毎日の安心を積み重ねる:ごはん、トイレ掃除、遊びを、決まったリズムで
猫は、もともと単独で暮らす動物で、自分の縄張りと自分のペースをとても大切にしています。犬のように、飼い主の指示に従うことに喜びを感じる動物ではありません。その代わり、「この人は自分を怖がらせない」「この人のそばにいると安心できる」と感じた相手には、深い信頼を寄せてくれます。
猫との信頼関係は、一日でできるものではありません。毎日の小さなふれあいを積み重ねることで、少しずつ育っていくものです。焦らず、猫のペースに合わせて、ゆっくり関係を深めていきましょう。
猫は飼い主をどう思っている?研究でわかったこと
「猫はクールで、飼い主のことをあまり気にしていない」と思われがちですが、近年の研究では、猫も飼い主と深い絆を築いていることがわかってきています。
| 研究でわかったこと | 内容 |
|---|---|
| 飼い主に愛着を持っている | 2019年のアメリカの研究で、多くの子猫が飼い主に対して「安定した愛着」を示すことが報告された。その割合は、人間の赤ちゃんや犬とほぼ同じくらいだった |
| 自分の名前を聞き分けている | 2019年の日本の研究で、猫はほかの言葉の中から自分の名前を聞き分けていることが確かめられた |
| ゆっくりまばたきで仲良くなれる | 2020年のイギリスの研究で、人がゆっくりまばたきをすると、猫もまばたきを返し、近づいてきやすくなることが示された |
| 飼い主の話し方を聞き分けている | 猫は、飼い主が自分に向けて話しかけているときと、ほかの人に話しているときの声を区別しているという研究もある |
「安定した愛着」とは、飼い主がそばにいると安心して周りを探索し、飼い主がいなくなると不安を感じ、戻ってくると落ち着くという関係のことです。猫もまた、飼い主を「安心できる存在」として頼りにしているのです。
こうした研究からわかるのは、猫は決して飼い主に無関心なわけではなく、ただ気持ちの表し方が犬や人間と違うだけだということです。猫のさりげないサインを読み取れるようになると、猫がどれほど飼い主を信頼しているかが見えてきます。名前を呼んだら来てくれるようにする練習については「名前を呼んだら来る猫にする方法」で紹介しています。
好かれる飼い主・嫌われる飼い主の違い
猫に好かれる飼い主と嫌われる飼い主には、はっきりとした違いがあります。

猫に嫌われてしまう行動の多くは、実は猫への愛情から来ています。かわいくて追いかけてしまう、抱っこしたくて無理に持ち上げてしまう、ずっと見つめてしまう、なで続けてしまう……。どれも猫が好きだからこその行動ですが、猫にとっては「怖いこと」「嫌なこと」になってしまうのです。
特に、じっと見つめることは、猫の世界では「けんかを売る」サインとされています。猫同士では、相手をじっと見つめるのは威嚇の意味があり、目をそらすのが争いを避ける合図です。猫を見つめるときは、じっと凝視せず、ときどき目をそらしたり、ゆっくりまばたきをしたりすると、猫に安心感を与えられます。
大きな声や急な動きも、猫を驚かせます。猫は聴覚がとても鋭く、人間には気にならない音でも、猫には大きく聞こえていることがあります。猫のそばでは、穏やかな声で、ゆったりと動くことを心がけましょう。
信頼関係を築く7つの習慣
猫との信頼関係は、特別なことをするよりも、毎日の小さな積み重ねで育っていきます。次の7つの習慣を意識してみましょう。

習慣1:猫から来るのを待つ
猫と仲良くなるためのいちばんの近道は、猫のほうから近づいてくるのを待つことです。猫がそばに来たら、手をそっと差し出して、においを嗅がせてあげましょう。猫が手に顔をこすりつけてきたら、「なでてもいいよ」のサインです。反対に、においを嗅いだだけで離れていったら、無理に追いかけず、そのままにしておきます。
習慣2:ゆっくりまばたきであいさつする
猫と目が合ったら、目を細めて、ゆっくりとまばたきをしてみましょう。猫同士では、ゆっくりまばたきは「敵意はないよ」「安心しているよ」という合図だといわれています。猫がゆっくりまばたきを返してくれたら、あなたに心を許しているサインです。
習慣3:穏やかな声で名前を呼ぶ
猫に話しかけるときは、少し高めの、穏やかでやさしい声を心がけましょう。名前を呼んだあとにおやつをあげたり、なでたりすることを繰り返すと、猫は名前を呼ばれると「いいことがある」と覚えていきます。叱るときに名前を使うのは避けましょう。
習慣4:好きな場所を短くなでる
猫がなでられて喜ぶのは、主にあごの下、頬、額、耳の付け根など、猫が自分でにおいをつける場所です。反対に、お腹やしっぽ、足先は嫌がる猫が多い場所です。なでる時間は短めにして、猫がもっとなでてほしそうにしていたら、少しずつ延ばしていきましょう。
習慣5:毎日遊ぶ時間をつくる
じゃらしで一緒に遊ぶ時間は、猫の狩りの本能を満たし、飼い主との絆を深める大切なひとときです。1回10〜15分程度でよいので、毎日決まった時間に遊ぶ習慣をつけましょう。遊んでくれる人は、猫にとって「楽しいことをしてくれる人」になります。遊び方のコツは「猫がおもちゃで遊ばない原因は?」で紹介しています。
習慣6:お世話の時間を一定にする
猫は、毎日同じリズムで暮らすことに安心を感じる動物です。ごはんの時間、トイレ掃除、遊びの時間などを、できるだけ毎日同じにしてあげましょう。「この人がいると、いつも決まった時間にごはんが出てきて、トイレもきれいになる」という経験の積み重ねが、猫の信頼につながります。
家族の中で、猫が特になついている人がいる場合、その人が毎日ごはんをあげていたり、トイレを掃除していたりすることが多いものです。猫と仲良くなりたい家族は、ごはんやおやつの担当を代わってもらうのもよい方法です。
習慣7:ひとりの時間と隠れ場所を尊重する
猫には、誰にも邪魔されずにひとりで過ごしたい時間があります。猫が隠れ家に入っているときや、眠っているとき、毛づくろいをしているときは、そっとしておいてあげましょう。猫にとって、「この人は自分の時間を邪魔しない」と感じられることは、とても大切です。
家の中に、猫が安心して隠れられる場所を用意しておくことも大切です。段ボール箱やドーム型のベッド、キャットタワーの上など、猫が一人になれる場所があると、猫は安心して暮らせます。部屋づくりについては「猫が快適に暮らせる部屋づくり」で紹介しています。
猫が信頼しているサイン
猫は、言葉の代わりに、しぐさや行動で気持ちを伝えています。次のようなサインが見られたら、猫はあなたを信頼しています。

しっぽをピンと立てて近づいてくるのは、猫が親しい相手にあいさつするときのしぐさです。子猫が母猫に近づくときにも、しっぽを立てています。帰宅したときにしっぽを立てて出迎えてくれたら、うれしい気持ちの表れです。
体や顔をすりすりこすりつけるのは、自分のにおいをつけて「仲間だよ」と印をつける行動です。飼い主の足に体をこすりつけるのは、あなたを自分の大切な仲間だと思っている証拠です。
お腹を見せて寝転がるのは、急所であるお腹を見せても大丈夫なほど安心しているサインです。ただし、お腹を見せているからといって、お腹をなでてほしいとは限りません。お腹をさわると怒る猫も多いので、気をつけましょう。
そのほか、前足でふみふみする、のどをゴロゴロ鳴らすといった行動は、子猫が母猫に甘えるときのしぐさで、飼い主を母猫のように慕っているサインです。
ゆっくりまばたきの効果とやり方
猫と仲良くなるための方法として、科学的にも効果が確かめられているのが、ゆっくりまばたき(スローブリンク)です。2020年にイギリスの大学が発表した研究では、次のようなことがわかりました。
- 飼い主が猫に向かってゆっくりまばたきをすると、猫もゆっくりまばたきを返すことが多くなった
- 初めて会う人がゆっくりまばたきをしたときのほうが、無表情のときよりも、猫がその人に近づいてきやすかった
つまり、ゆっくりまばたきは、飼い主だけでなく、初めて会う猫とも仲良くなるきっかけになるのです。やり方は簡単です。
- 猫と目が合ったら、じっと見つめずに目を細める:にっこり笑うようなやわらかい表情で
- ゆっくりと目を閉じる:1〜2秒ほどかけて、ゆっくりまぶたを下ろす
- ゆっくりと目を開ける:目を開けたら、少し視線をそらす
- 猫の反応を見る:猫がまばたきを返してくれたら成功
猫がすぐに返してくれなくても、がっかりする必要はありません。毎日少しずつ続けていると、猫のほうからゆっくりまばたきをしてくれるようになることもあります。猫がゆっくりまばたきをしてきたら、あなたもゆっくりまばたきで返してあげましょう。言葉がなくても、心が通じ合う瞬間です。
なで方と抱っこのコツ
猫が喜ぶなで方や抱っこのしかたを知っておくと、猫とのふれあいがもっと楽しくなります。
| 場面 | 好かれるコツ | 嫌われやすいこと |
|---|---|---|
| なでる場所 | あごの下、頬、額、耳の付け根 | お腹、しっぽ、足先を急にさわる |
| なでる時間 | 短めに。猫が求めてきたら延ばす | しっぽをパタパタ振っているのになで続ける |
| 抱っこのしかた | お尻と後ろ足をしっかり支える | 脇の下だけを持って宙づりにする |
| 抱っこの時間 | 猫が嫌がる前に下ろす | もがいているのに離さない |
なでているときに、しっぽをパタパタ左右に振る、耳が横に倒れる、背中の皮膚がぴくぴく動く、といった様子が見られたら、「もうやめて」のサインです。すぐになでるのをやめましょう。このサインを無視すると、猫は噛んだり引っかいたりして「やめて」と伝えるようになります。噛み癖については「猫の噛み癖は直せる!原因別の対処法」で紹介しています。
抱っこが苦手な猫は、少なくありません。無理に抱っこしようとせず、膝の上に乗ってくるのを待つ、隣に座ってなでるなど、猫が心地よいと感じるふれあい方を探してみましょう。
嫌われてしまったときの関係修復
無理に抱っこしてしまった、動物病院に連れて行った、爪切りで嫌な思いをさせてしまった……。そんなことがきっかけで、猫に避けられるようになってしまうこともあります。でも、猫との関係は、時間をかければ修復することができます。
- しばらく距離を置く:無理に近づかず、猫が落ち着くのを待つ
- いいことだけをする:ごはんやおやつをあげる、じゃらしで遊ぶなど、猫が喜ぶことだけをする
- 猫から来るのを待つ:猫が近づいてきたら、そっと手を差し出してにおいを嗅がせる
- 短いふれあいを重ねる:少しなでたら離れる、を繰り返し、「この人は大丈夫」と感じてもらう
- 嫌なことは別の人に頼む:爪切りや投薬は、しばらくほかの家族や動物病院にお願いする
関係の修復には、数日から数週間かかることもあります。焦って距離を縮めようとすると、かえって猫の警戒心が強くなってしまいます。「猫のほうから近づいてきてくれるまで待つ」という姿勢を大切にしましょう。
動物病院や爪切りなど、どうしても避けられない嫌なことのあとは、おやつをあげたり、好きな遊びをしたりして、「嫌なことのあとには、いいことがある」と感じてもらうことが大切です。キャリーや通院に慣れさせる方法は「猫がキャリーを嫌がって病院に行けない!慣れさせる練習法5ステップ」で紹介しています。
新しく迎えた猫・保護猫との関係づくり
新しく迎えた猫や、人に慣れていない保護猫と信頼関係を築くには、特に時間と根気が必要です。
| 段階 | 飼い主がすること |
|---|---|
| 迎えてすぐ | 静かな1部屋で過ごさせ、ごはん・水・トイレ・隠れ家を用意する。無理に近づかない |
| 慣れてきたら | 同じ部屋で静かに過ごし、猫が人の存在に慣れるのを待つ |
| 近づいてくるようになったら | 手からおやつをあげる、じゃらしで遊ぶ |
| さわれるようになったら | あごの下や頬を短くなでる。嫌がったらすぐやめる |
人に慣れていない保護猫の場合、猫が人に心を開くまでに、数週間から数か月かかることもあります。猫が隠れ家から出てこなくても、無理に引っぱり出さず、ごはんをあげ、トイレを掃除し、静かに見守ることを続けましょう。飼い主が「安全な存在」だとわかれば、猫は少しずつ自分から近づいてきてくれます。
子猫の場合は、社会化期に人とふれあう経験が、その後の性格に大きく影響するといわれています。子猫の社会化については「子猫の性格は生後2〜7週で決まる?社会化期に慣れさせたい体験リスト」で紹介しています。
家族の中で猫に好かれる人になるには
「家族の中で、自分にだけなついてくれない」という悩みもよく聞きます。猫がなつく人には、いくつかの共通点があります。
- ごはんやおやつをくれる人:食事の担当は、猫にとって特別な存在になりやすい
- トイレをきれいにしてくれる人:快適な暮らしを支えてくれる人を、猫はちゃんと見ている
- 静かで穏やかな人:大きな声を出さず、ゆったりと動く人のそばは安心できる
- 遊んでくれる人:じゃらしで楽しい時間をくれる人
- 嫌なことをしない人:爪切りや投薬の担当は、一時的に避けられやすい
猫に好かれたい家族は、ごはんやおやつ、遊びの担当を引き受けてみましょう。反対に、爪切りや投薬など、猫が嫌がるお世話を担当している人は、そのあとに必ずおやつや遊びでフォローしてあげると、関係が崩れにくくなります。
小さな子どもは、猫が好きなあまり、追いかけたり大きな声を出したりしがちです。子どもには、猫が近づいてくるのを待つこと、寝ている猫を起こさないことなど、猫と仲良くなるルールをやさしく教えてあげましょう。
猫との信頼関係でよくある質問
-
Q猫が膝に乗ってくれません。嫌われているのでしょうか?
-
A膝に乗らないからといって、嫌われているとは限りません。猫によって、好きな距離感は違います。膝には乗らなくても、同じ部屋でくつろいでいる、そばで眠っている、しっぽを立てて近づいてくるといった様子があれば、猫はあなたを信頼しています。
-
Q猫に話しかけるのは効果がありますか?
-
A猫は、飼い主が自分に向かって話しかける声を聞き分けているという研究もあります。穏やかな声で名前を呼んだり、話しかけたりすることは、猫とのコミュニケーションになります。ただし、大きな声や、しつこく話しかけ続けるのは避けましょう。
-
Q急に甘えなくなりました。どうしてでしょう?
-
A環境の変化やストレス、嫌な経験などが原因のこともありますが、体の痛みや病気が隠れていることもあります。急に態度が変わったときは、食欲や元気、トイレの様子にも変化がないかを確認し、気になることがあれば動物病院で相談しましょう。
まとめ:猫のペースを尊重することが、いちばんの愛情表現
猫に好かれる飼い主と嫌われる飼い主の違いは、愛情の大きさではなく、猫のペースを尊重できるかどうかです。猫は、自分の気持ちを大切にしてくれる人に、深い信頼を寄せてくれます。
- 猫は「距離を尊重してくれる人」を信頼する。追いかけず、猫から来るのを待つ
- じっと見つめる、大きな声、無理な抱っこ、しつこくなでるのは嫌われやすい
- ゆっくりまばたきは、研究でも効果が確かめられた猫とのあいさつ
- 7つの習慣:待つ・まばたき・穏やかな声・短くなでる・遊ぶ・一定のリズム・ひとりの時間の尊重
- しっぽを立てる、すりすり、ふみふみ、そばで眠るのは信頼のサイン
- 嫌われてしまっても、距離を置いて「いいこと」を積み重ねれば関係は修復できる
猫との信頼関係は、毎日の小さな積み重ねで少しずつ育っていきます。今日から、猫と目が合ったら、ゆっくりまばたきをしてみてください。猫がまばたきを返してくれたとき、あなたと猫の間には、言葉を超えた確かな絆が生まれているはずです。猫の気持ちをもっと知りたい方は「そのしぐさ、猫のSOSかも?ストレスサインの見抜き方」もあわせてご覧ください。

