ペットショップのグルーミング用品売り場には、形も素材もさまざまなブラシがずらりと並んでいます。「どれを買えばいいのかわからない」「買ったブラシを猫が嫌がって使えない」「毛が全然取れない」。そんな経験をした飼い主さんは多いのではないでしょうか。
猫のお手入れ用品は、猫の毛の長さや下毛の量、性格によって、合うものがまったく違います。合わない道具を使うと、毛が取れないだけでなく、皮膚を傷つけたり、猫がお手入れそのものを嫌いになったりすることもあります。
この記事では、ブラシの種類と毛質別の選び方、上手なブラッシングの手順、換毛期の集中ケア、爪切りやシャンプーなどそのほかのお手入れ用品まで、図と表でわかりやすくまとめました。
この記事の結論
- 短毛種はラバーブラシ、長毛種はスリッカーブラシとコームが基本の組み合わせです
- 下毛の多い猫(ダブルコート)は、短毛でも換毛期にスリッカーなどで下毛をしっかり取る必要があります
- ブラッシングは短く、やさしく、毛の流れに沿って。嫌がる前に終わらせるのがコツです
- 健康な短毛種の猫に、シャンプーは基本的に不要です
猫にお手入れはなぜ必要?
猫は1日の多くの時間を毛づくろいに使う、とてもきれい好きな動物です。「自分でお手入れできるのだから、人間が手伝う必要はないのでは」と思うかもしれません。けれど、室内で暮らす猫には、飼い主のお手入れが欠かせない理由があります。
一つ目は、毛玉と毛球症の予防です。猫は毛づくろいのときに、抜けた毛をたくさん飲み込みます。多くは便と一緒に出たり、毛玉として吐き出されたりしますが、量が多すぎると胃や腸に詰まってしまうことがあります。ブラッシングで抜け毛を先に取り除いておけば、飲み込む毛の量を大きく減らせます。
二つ目は、皮膚と被毛の健康を保つことです。長毛種は毛がからまって毛玉ができやすく、放っておくと皮膚が引っ張られて痛みが出たり、蒸れて皮膚炎を起こしたりします。年をとって体がかたくなったシニア猫や、太った猫は、背中やお尻に舌が届かず、フケや毛玉が増えがちです。
三つ目は、健康チェックの機会になることです。ブラッシングしながら体に触れていると、しこりや傷、ノミ、皮膚の赤み、体重の変化などに自然と気づけます。毎日のお手入れの時間は、猫とのスキンシップの時間であり、病気の早期発見の時間でもあるのです。
ブラシの種類と特徴
猫用のブラシには、いくつかの種類があります。それぞれ得意なことが違うので、特徴を知っておくと選びやすくなります。

| ブラシ | 得意なこと | 注意点 |
|---|---|---|
| ラバーブラシ | 短毛の抜け毛をからめ取る、マッサージ効果 | 長毛の奥の毛玉には不向き |
| スリッカーブラシ | 長毛・ダブルコートの抜け毛や軽いもつれ | ピンが細く、力を入れると皮膚を傷つける |
| コーム(くし) | 毛玉ほどき、仕上げ、ノミ取り | 先が丸いものを選び、皮膚をこすらない |
| 獣毛ブラシ | 毛づやを出す、ほこりを取る | 抜け毛を取る力は弱い |
| アンダーコート用ブラシ | 換毛期の下毛の大量除去 | 使いすぎると毛を取りすぎる。週1回程度に |
最近は、ボタンを押すとピンが引っ込んで、取れた毛を簡単に捨てられるスリッカーブラシや、静電気が起きにくい素材のブラシなど、使いやすさを工夫した製品も増えています。毎日使うものなので、飼い主の手になじみ、お手入れしやすいものを選ぶと長く続けられます。
ブラシを選ぶときは、毛の長さだけでなく、猫の皮膚の敏感さも考えましょう。皮膚が薄い猫やシニア猫には、ピンの先が丸くなっているもの、やわらかい素材のものがおすすめです。実際に自分の手の甲に当ててみて、痛くないかを確かめてから使うと安心です。
毛質別のブラシの組み合わせ
ブラシは、1本で何でもこなせるものはありません。猫の毛質に合わせて、2本程度を組み合わせるのがおすすめです。

ポイントになるのが「ダブルコート」かどうかです。猫の被毛には、外側の硬めの毛(上毛)と、内側のやわらかい毛(下毛)があります。下毛が多いダブルコートの猫は、短毛種でも春と秋の換毛期に驚くほど毛が抜けます。ブリティッシュショートヘアやロシアンブルー、スコティッシュフォールドなどが代表的です。
こうした猫には、ふだんはラバーブラシで十分でも、換毛期にはスリッカーブラシやアンダーコート用ブラシで下毛をしっかり取ってあげる必要があります。反対に、下毛の少ないシャムやアビシニアンなどは、ラバーブラシと獣毛ブラシだけで十分きれいに保てます。
長毛種は、毎日のブラッシングが欠かせません。スリッカーブラシで全体の抜け毛を取り、最後にコームで毛の根元までとかして、もつれが残っていないかを確認します。脇の下やお腹、内もも、耳の後ろは特に毛玉ができやすい場所なので、念入りにチェックしましょう。
上手なブラッシングの手順とコツ
ブラッシングを猫が好きになるかどうかは、最初の経験と日々のやり方で決まります。次の手順を参考に、猫が気持ちよく感じられるお手入れを心がけましょう。

ブラッシングは、毛の流れに沿ってとかすのが基本です。逆方向にとかすと、猫は不快に感じますし、皮膚を傷めることもあります。ブラシは皮膚に強く押しつけず、毛の表面をなでるような力加減で動かしてください。スリッカーブラシは特にピンが細いので、手首の力を抜いて軽く使うのがコツです。
猫が喜ぶのは、頬やあごの下、首の後ろ、背中など、自分で毛づくろいしにくい場所や、なでられて気持ちのいい場所です。まずはそこから始めて、猫がリラックスしてきたら、ほかの場所へ少しずつ広げていきましょう。
ブラッシングの前に、まず手で体をなでて、毛の状態や皮膚にできものがないかを確かめるのもおすすめです。いきなりブラシを当てるより、手でなでてから始めたほうが、猫も安心して身をまかせてくれます。
時間は、最初は1〜2分で十分です。猫がしっぽを大きく振り始めた、体をよじって逃げようとする、耳を倒したといったサインが出たら、そこで終わりにします。嫌がる前にやめることを繰り返すうちに、猫はブラッシングの時間を楽しみに待つようになります。
毛玉ができてしまったら
長毛種や、毛づくろいが苦手な猫には、毛がからまって毛玉ができることがあります。小さいうちにほどいてあげることが大切です。
- 毛玉の根元(皮膚に近い部分)を指でしっかり押さえ、皮膚が引っ張られないようにする
- コームの先で、毛玉の外側から少しずつほぐしていく
- ほぐれにくい場合は、指で毛玉を割くように分けてから、少しずつとかす
- 一度にほどこうとせず、猫が嫌がったら続きは翌日にする
毛玉が大きく固まってしまった場合や、皮膚に密着している場合は、無理にほどこうとしないでください。ハサミで切ろうとすると、毛と一緒に皮膚を切ってしまう事故がよく起こります。猫の皮膚はとても薄く伸びやすいため、毛玉を持ち上げたときに皮膚まで一緒に持ち上がっていることに気づきにくいのです。大きな毛玉は、動物病院やトリミングサロンでバリカンを使って取ってもらいましょう。
毛玉は、脇の下、お腹、内もも、耳の後ろ、首まわりなど、体がこすれる場所や湿りやすい場所にできやすい傾向があります。ブラッシングのときに、これらの場所を指でさわって確認する習慣をつけると、毛玉が小さいうちに気づけます。
換毛期の集中ケア
猫は春(3〜5月ごろ)と秋(9〜11月ごろ)に、季節に合わせて毛が生え変わる「換毛期」を迎えます。この時期は抜け毛が一気に増え、部屋じゅうが毛だらけになるほどです。完全室内飼いの猫は、照明や空調の影響で1年中少しずつ毛が抜けることもありますが、それでも春と秋に抜け毛が増える傾向は変わりません。
換毛期は、ブラッシングの回数を増やしましょう。短毛種は週2〜3回から毎日へ、長毛種は毎日から朝夕の1日2回へと増やすのが目安です。下毛の多い猫は、週に1回程度、アンダーコート用ブラシで下毛をまとめて取り除くと、その後のお手入れがぐっと楽になります。
換毛期は、毛玉を吐く回数が増えたり、毛球症を起こしやすくなったりする時期でもあります。ブラッシングとあわせて、毛玉ケア用のフードや、水分を多めにとらせる工夫も取り入れましょう。毛玉と毛球症の対策は「猫が毛玉を吐けないのは危険サイン!毛球症の症状と予防」で詳しく紹介しています。
換毛期は、ブラッシングの後に部屋の掃除もこまめにすると、猫が床の抜け毛を踏んで舞い上げたり、なめてしまったりするのを防げます。空気清浄機やロボット掃除機を上手に使うのも一つの方法です。抜け毛をブラシで先に取り除いておくことが、部屋をきれいに保ついちばんの近道です。
取れた抜け毛の量を見ると、ふだんどれだけの毛を猫が飲み込んでいるかを実感できます。部屋の抜け毛対策としても、換毛期のブラッシングはいちばん効果的な方法です。
ブラッシングを嫌がる猫への工夫
ブラシを見ただけで逃げてしまう猫もいます。過去に毛玉を引っ張られて痛い思いをした、長時間押さえつけられた、といった経験が原因になっていることが多いものです。次のような工夫で、少しずつ苦手意識を和らげていきましょう。
- 道具を変える:ピンのブラシが苦手なら、ラバーブラシや手袋型ブラシから始める
- ブラシに慣らす:ブラシを床に置いてにおいを嗅がせ、そばでおやつをあげる
- 1回1〜2なでから:好きな場所を1〜2回とかしたら、すぐおやつ。少しずつ回数を増やす
- タイミングを選ぶ:寝起きや、なでられてゴロゴロ言っているときに
- ペースト状のおやつを使う:なめている間にさっととかす
どうしても嫌がる場合は、無理をせず、動物病院やトリミングサロンの力を借りることも考えましょう。叱らずにほめて慣らしていく方法は「猫のしつけは叱ると逆効果!失敗しない褒め方・叱り方」でも紹介しています。
爪切りの種類と選び方
爪切りも、猫のお手入れに欠かせない道具です。人間用の爪切りは、猫の丸い爪を押しつぶして割ってしまうことがあるため、必ず猫用のものを使いましょう。
| 種類 | 特徴 | 向いている人・猫 |
|---|---|---|
| ハサミ型 | ハサミのように使える。切る位置を見ながら調整しやすい | 初めての人、子猫、爪の細い猫 |
| ギロチン型 | 穴に爪を入れて切る。太い爪も一度で切れる | 慣れている人、成猫・シニア猫 |
| ニッパー型 | 力が入りやすく、硬い爪も切りやすい | 厚くなったシニア猫の爪 |
| 電動やすり | 少しずつ削るので深爪しにくい | 音や振動を怖がらない猫 |
爪切りの目安は、成猫で2〜3週に1回、子猫で1〜2週に1回です。爪の根元には血管と神経が通っているので、先端の白く透明な部分だけを切ります。万一に備えて、ペット用の止血剤も一緒に用意しておくと安心です。切り方や嫌がる猫への慣らし方は「爪切りを嫌がる猫でも大丈夫!暴れない切り方」で詳しく解説しています。
シャンプーは必要?
健康な短毛種の猫には、シャンプーは基本的に必要ありません。猫は毛づくろいで体を清潔に保っているうえ、洗いすぎると皮膚を守る脂分が失われ、かえって乾燥やフケの原因になることがあるからです。そもそも水に濡れることが苦手な猫が多く、シャンプーそのものが大きなストレスになります。
一方で、次のような場合は、シャンプーが必要になることがあります。
| シャンプーが必要な場面 | ポイント |
|---|---|
| 長毛種の定期的なお手入れ | 数か月に1回程度。毛のべたつきや毛玉予防に |
| 体がひどく汚れたとき | 油や薬品がついた場合は、なめる前に落とす |
| 皮膚病の治療 | 獣医師の指示で薬用シャンプーを使う |
| シニア猫・肥満の猫 | 毛づくろいができない部分だけ部分洗いや拭き取りで |
シャンプーは必ず猫用を使い、人間用は使わないでください。洗うときは、ぬるま湯(36〜38℃程度)で、顔にお湯がかからないように注意します。洗った後は、タオルでしっかり水気を取り、ドライヤーは低温で、音を怖がらないよう離して使いましょう。濡れたままだと体が冷えたり、皮膚炎の原因になったりします。
シャンプーの後は体が冷えやすいので、暖かい部屋で乾かし、完全に乾くまで外気や冷房の風に当てないようにしましょう。水が苦手な猫には、水を使わずに拭き取るタイプのシャンプーや、ぬるま湯で湿らせたタオルで体を拭く方法もおすすめです。
目・耳・口のお手入れ用品
ブラシや爪切りのほかにも、猫の健康を守るお手入れ用品があります。
- 目のケア:目やにを拭き取るコットンやペット用のアイケアシート。ぬるま湯で湿らせて、目頭から外側へやさしく拭く
- 耳のケア:猫用のイヤークリーナーとコットン。見える範囲だけを拭き、綿棒で奥をこすらない
- 口のケア:猫用の歯ブラシや歯みがきシート、猫用の歯みがきペースト。歯周病予防に毎日のケアが理想
目・耳・口のお手入れは、汚れを取るだけでなく、病気のサインに気づくためのチェックの時間でもあります。目やにの色、耳あかの状態、口臭や歯ぐきの色など、いつもと違う変化があれば、早めに動物病院に相談しましょう。詳しいケアの方法は「猫の目やに・耳垢・鼻水は放置NG|自宅ケアの方法」と「嫌がる猫でもできる歯磨きとデンタルケア」で紹介しています。
お手入れ用品の手入れと買い替えの目安
お手入れ用品は、使った後の手入れも大切です。汚れたブラシを使い続けると、雑菌が繁殖して皮膚トラブルの原因になることがあります。
| 用品 | 手入れの方法 | 買い替えの目安 |
|---|---|---|
| ブラシ・コーム | 使うたびに毛を取り除き、月1回程度ぬるま湯と中性洗剤で洗って乾かす | ピンが曲がった・抜けた、ゴムが劣化した |
| 爪切り | 使った後は汚れを拭き、乾いた場所で保管 | 切れ味が落ちて、爪がつぶれるようになった |
| 歯ブラシ | 使うたびに水で洗い、よく乾かす | 毛先が開いてきたら(目安1〜2か月) |
多頭飼いで皮膚病の猫がいる場合は、ブラシを猫ごとに分けて使いましょう。皮膚糸状菌(カビ)やノミなどは、ブラシを介してほかの猫にうつることがあります。
ブラシについた抜け毛は、その日の毛の量を知る手がかりにもなります。急に抜け毛が増えた、特定の場所だけ毛が薄くなった、フケが混じるようになったといった変化は、皮膚の病気やストレスのサインのこともあります。気になる変化があれば、写真を撮って動物病院で相談しましょう。
お手入れ用品は、一か所にまとめて保管しておくと、思い立ったときにすぐお手入れができて便利です。猫が近づきたくなるよう、お手入れの後にあげるおやつも、同じ場所に置いておくとよいでしょう。
シニア猫・長毛種のお手入れとサロンの活用
年をとると、猫は体がかたくなり、関節の痛みもあって、背中やお尻、後ろ足などを毛づくろいしにくくなります。その結果、フケが増えたり、毛玉ができたり、お尻まわりが汚れたりしがちです。シニア猫には、やわらかいブラシで短時間ずつ、こまめにお手入れを手伝ってあげましょう。関節が痛む猫は、無理な姿勢をとらせず、横になってくつろいでいるときにやさしくとかしてあげてください。
長毛種は、お尻まわりの毛にうんちがついたり、足の裏の毛が伸びてフローリングで滑りやすくなったりすることがあります。お尻まわりや足の裏の毛を短く整えるだけでも、お手入れがぐっと楽になります。ただし、自宅でハサミを使うのは皮膚を切る危険があるため、慣れないうちはプロにお願いするのが安心です。
トリミングサロンや動物病院では、シャンプーや毛玉取り、部分カット、爪切り、耳掃除などをまとめてお願いできます。猫の扱いに慣れたスタッフがいる店を選びましょう。自宅ケアとサロンの使い分けは「猫のシャンプー・トリミングは必要?自宅ケアとペットサロンの使い分け」で詳しく紹介しています。
猫のお手入れ用品についてよくある質問
-
Q100円ショップのブラシでも大丈夫ですか?
-
A使えるものもありますが、ピンの先がとがっていたり、ゴムがかたかったりして、皮膚を傷つけることがあります。自分の手の甲に当てて痛くないか確かめ、猫が嫌がるようなら、猫用に作られたブラシに替えましょう。
-
Qブラッシングはどのくらいの時間すればいいですか?
-
A短毛種なら1回数分、長毛種でも5〜10分程度で十分です。長くやることより、毎日または数日おきに続けることが大切です。猫が嫌がるサインを出したら、途中でも終わりにしましょう。
-
Qアンダーコート用ブラシは毎日使ってもいいですか?
-
A下毛を取る力が強いため、毎日使うと必要な毛まで取りすぎたり、皮膚を傷めたりすることがあります。換毛期でも週1回程度にとどめ、ふだんのお手入れはラバーブラシやスリッカーブラシで行いましょう。
まとめ:毛質に合った道具で、毎日のお手入れを楽しい時間に
猫のお手入れ用品は、猫の毛質と性格に合ったものを選ぶことで、お手入れの効果も、猫の気持ちよさも大きく変わります。
- 短毛種はラバーブラシ、長毛種はスリッカーとコームが基本
- 下毛の多い猫は、換毛期に下毛をしっかり取る
- ブラッシングは短く、やさしく、毛の流れに沿って
- 大きな毛玉はハサミで切らず、プロにお願いする
- 健康な短毛種にシャンプーは基本的に不要
- お手入れの時間は、健康チェックとスキンシップの時間
まずは今日、愛猫がいちばん好きな場所を、1〜2回だけやさしくとかしてみてください。気持ちよさそうに目を細めてくれたら、それがお手入れ好きになる第一歩です。毎日の数分が、愛猫との絆を深める大切な時間になります。

