ベッドの上に、じんわりと広がるおしっこのしみ。ソファの隅やラグの上、脱ぎっぱなしの洗濯物の上……。今までちゃんとトイレでできていた猫が、急にトイレ以外の場所でおしっこをするようになると、飼い主は困り果ててしまいます。「わざと困らせているの?」と感じてしまうこともあるかもしれません。
でも、猫がトイレ以外で排泄するのには、必ず理由があります。そして、急に粗相が始まった場合に最初に疑うべきなのは、しつけではなく病気です。膀胱炎や尿路結石など、おしっこに関わる病気は猫にとても多く、痛みや違和感からトイレ以外の場所で排泄してしまうことがあるのです。
この記事では、猫がトイレ以外でおしっこをする原因を見分ける順番を図解し、病気・トイレ環境・ストレスなど原因別の対処法、子猫のトイレトレーニングの手順、におい残りを防ぐ正しい後始末、やってはいけないNG対応まで、粗相の悩みを解決するための方法をまとめました。
この記事でわかること
- 子猫・成猫にトイレを覚えてもらう手順
- 粗相の原因を見分ける順番と、すぐ受診すべき症状
- 病気・環境・ストレスなど、原因別の対処法
- 粗相とスプレー行動の見分け方
- におい残りを防ぐ正しい後始末と、NG対応
結論:急な粗相は「病気→環境→ストレス」の順に疑う
猫の粗相の原因は、大きく分けると病気、トイレ環境への不満、ストレスの3つです。このうち、真っ先に確認したいのが病気です。
理由は2つあります。1つは、病気が原因の場合、トイレ環境をいくら整えても粗相は治らないこと。もう1つは、おしっこに関わる病気の中には、命に関わる緊急のものがあることです。特に、オス猫でおしっこがほとんど出ていない場合は、尿道が詰まっている可能性があり、一刻を争います。
- トイレに何度も行くのに、少ししか出ない・まったく出ない→すぐに動物病院へ
- おしっこに血が混じる、トイレで痛そうに鳴く→早めに動物病院へ
- 病気の心配がない→トイレの砂・大きさ・場所・清潔さを見直す
- 環境にも問題がない→最近の変化やストレスの原因を探す
粗相は、猫が「何かがおかしい」と伝えているサインです。叱ったりせず、猫の体と暮らしに何が起きているのかを、一つずつ確認していきましょう。
子猫のトイレトレーニングの手順
猫は、もともと砂や土の上で排泄し、砂をかけてにおいを隠す習性を持っています。そのため、犬に比べてトイレのしつけはずっと簡単で、多くの子猫は、迎えてから数日から1週間ほどでトイレを覚えます。

トイレトレーニングで大切なのは、排泄のタイミングを見逃さないことです。子猫は、寝起き、食事のあと、遊んだあとに排泄することが多いです。床のにおいをくんくん嗅ぎ回る、落ち着きなくうろうろする、床をかくようなしぐさをする、といった様子が見られたら、排泄したいサインです。そっと抱き上げて、トイレに連れて行きましょう。
元の家やペットショップで使っていた砂を少し分けてもらい、新しいトイレに混ぜておくのも効果的です。自分のにおいがついた砂があると、子猫はそこをトイレだとすぐに理解できます。もし最初に失敗してしまったら、おしっこを少しティッシュに吸わせて、トイレの砂の上に置いておくのもひとつの方法です。
トイレでできたときは、用を足し終わってから、やさしく声をかけたりなでたりしてほめましょう。排泄の最中に大きな声でほめたり、さわったりすると、猫が驚いてしまうことがあるので注意してください。
子猫のうちは、行動範囲の広さに対してトイレが遠いと、間に合わずに失敗することがあります。最初はケージや1部屋など、狭い範囲で過ごさせ、トイレの場所を覚えてから少しずつ行動範囲を広げていくと、失敗を減らせます。子猫を迎える準備は「子猫を迎える前の準備チェックリスト」でまとめています。
成猫・保護猫を迎えたときの教え方
成猫や保護猫を迎えた場合も、基本的な考え方は子猫と同じです。ただし、成猫はすでに自分なりのトイレの好みを持っていることが多いため、前の環境に近いトイレを用意してあげることがポイントになります。
- 前に使っていた砂の種類を聞いておく:同じ種類の砂を用意すると、すぐに使ってくれやすい
- トイレの形も前と近いものに:屋根付きだったか、オープンだったかを確認
- 最初は1部屋で過ごさせる:新しい環境に慣れるまで、トイレを見つけやすくする
- 外で暮らしていた猫には土や砂を:最初は庭の土や、砂に近い細かい砂を試す
外で暮らしていた保護猫は、土の上で排泄することに慣れていて、室内のトイレを使わないことがあります。その場合は、トイレに少し土を混ぜたり、鉱物系の細かい砂を使ったりすると、トイレだと認識しやすくなります。慣れてきたら、少しずつ普通の猫砂に切り替えていきましょう。
粗相の原因を見分ける順番
トイレを覚えていたはずの猫が粗相をするようになったら、次の順番で原因を探っていきましょう。上から順に確認していくことで、見落としを防げます。

原因を見分けるためには、粗相の様子をよく観察することが大切です。次のようなことをメモしておくと、原因を探るヒントになり、動物病院を受診するときにも役立ちます。
- いつから粗相が始まったか。その前後に何か変化はあったか
- おしっこか、うんちか。おしっこの量は多いか、少ないか
- 粗相する場所は決まっているか。床か、壁や家具の縦の面か
- トイレに入る回数は増えていないか。トイレの中での様子はどうか
- 食欲、元気、水を飲む量に変化はないか
粗相する場所にも、猫の気持ちが表れていることがあります。ベッドや布団、洗濯物、ラグなど、やわらかく飼い主のにおいがする場所で粗相をする場合は、不安やストレスを感じていたり、トイレの砂よりもやわらかい感触を求めていたりすることが考えられます。お風呂場や洗面所のマットなど、ひんやりした場所で粗相をする場合は、膀胱炎などで排尿に痛みがあるケースもあります。
病気が原因の粗相
猫は、おしっこに関わる病気がとても多い動物です。次のような病気は、粗相のきっかけになることがあります。
| 病気 | 主な症状 | 緊急度 |
|---|---|---|
| 尿道閉塞 | トイレに何度も行くが、尿がほとんど出ない。オスに多い | 非常に高い(すぐ受診) |
| 膀胱炎(特発性など) | 頻尿、血尿、トイレで鳴く、トイレ以外で少量ずつ排尿 | 高い(早めに受診) |
| 尿路結石 | 頻尿、血尿、排尿時の痛み | 高い(早めに受診) |
| 腎臓病・糖尿病 | 水をよく飲み、尿の量が増える。トイレが間に合わない | 中(受診して検査) |
| 関節炎 | トイレの縁をまたぐのがつらく、トイレの外で排泄 | 中(受診して相談) |
| 便秘 | トイレで長くいきむ、うんちが硬い、トイレ以外で排便 | 中(数日続くなら受診) |
中でも注意したいのが尿道閉塞です。尿道に結石や炎症の産物が詰まって、おしっこが出なくなる状態で、尿道の細いオス猫に多く見られます。おしっこが出ない状態が続くと、体に老廃物がたまり、1〜2日で命に関わることもあります。トイレに何度も入るのに、砂が固まっていない、少ししか固まっていないという場合は、夜間でも救急の動物病院に連絡してください。
特発性膀胱炎は、はっきりした原因がわからない膀胱炎で、猫の膀胱炎の中でも多いタイプです。ストレスが大きく関係していると考えられており、引っ越しや来客、多頭飼いのトラブルなどがきっかけになることがあります。治療とあわせて、ストレスを減らす環境づくりが大切になります。
おしっこではなく、うんちだけをトイレの外でしてしまう場合もあります。便秘で排便に痛みがある、下痢で間に合わない、長毛の猫でお尻の毛にうんちがからまって気持ちが悪い、といった体の問題が隠れていることが少なくありません。「おしっこ用とうんち用でトイレを分けたい」という猫もいるため、トイレを1つ増やすだけで解決することもあります。うんちの硬さや回数もあわせて確認し、下痢や便秘が続くときは動物病院に相談しましょう。
トイレ環境が原因の粗相
病気の心配がない場合、次に疑いたいのがトイレ環境への不満です。猫はとてもきれい好きで、トイレに少しでも気に入らないところがあると、別の場所で用を足すことがあります。
- トイレが汚れている:うんちやおしっこが残っていると、猫は使いたがらない
- 砂が好みに合わない:砂の種類を急に変えた、香り付きの砂にした
- トイレが小さい:成長して体が大きくなり、トイレが窮屈になった
- 置き場所が落ち着かない:洗濯機の横、人通りの多い廊下、ごはんの近く
- トイレの数が足りない:多頭飼いで、ほかの猫が使ったトイレを嫌がる
- トイレに行けない:ドアが閉まっていて、トイレのある部屋に入れない
トイレに不満がある猫は、粗相をする前に、トイレの縁に足をかけて用を足す、砂をかかずにすぐ出てくる、トイレの外の床をかく、といったサインを出していることが多いです。こうした様子が見られたら、トイレの環境を一つずつ見直してみましょう。
トイレの数は「猫の頭数+1個」が目安です。1匹飼いでも、トイレを2つ用意しておくと、片方が汚れていても、もう片方を使えるので安心です。砂の種類や置き場所、掃除の頻度については「猫がトイレを嫌がる原因は環境かも?猫砂・置き場所・掃除頻度の正解」で、トイレ本体の選び方は「猫のトイレはどれがいい?」でくわしく解説しています。
ストレスが原因の粗相
病気でもトイレ環境でもない場合は、ストレスが原因になっていることがあります。猫は環境の変化にとても敏感な動物で、人にとっては小さな変化でも、猫にとっては大きなストレスになることがあります。
| ストレスのきっかけ | 具体例 |
|---|---|
| 環境の変化 | 引っ越し、模様替え、リフォーム、家具の買い替え |
| 家族の変化 | 新しい猫や犬を迎えた、赤ちゃんが生まれた、家族が増えた・減った |
| 生活リズムの変化 | 飼い主の仕事が変わった、留守番の時間が長くなった |
| 外からの刺激 | 窓の外に知らない猫が来る、工事の音がうるさい |
| 猫同士の関係 | 多頭飼いで、ほかの猫にトイレの前で待ち伏せされる |
ストレスによる粗相には、ストレスの原因をできるだけ取り除くことと、猫が安心して過ごせる場所を用意してあげることが大切です。新しい猫を迎えた場合は、先住猫のトイレや寝床の場所を変えないようにしましょう。飼い主の留守が長くなった場合は、帰宅後にしっかり遊ぶ時間を作ってあげてください。ストレスのサインについては「そのしぐさ、猫のSOSかも?ストレスサインの見抜き方」も参考にしてください。
粗相とスプレー行動の見分け方
トイレ以外でのおしっこには、「粗相」と「スプレー行動(マーキング)」の2種類があります。見た目は似ていますが、原因も対処法も違うので、まずはどちらなのかを見分けましょう。
| 比較項目 | 粗相 | スプレー行動 |
|---|---|---|
| 姿勢 | しゃがんでする | 立ったまま、しっぽを上げて小刻みに震わせる |
| 場所 | 床、ベッド、ラグなど平らな場所 | 壁、家具、カーテンなど縦の面 |
| 量 | ふだんのおしっこと同じくらい | 少量 |
| におい | ふだんのおしっこのにおい | ふだんより強いにおい |
| 主な原因 | 病気、トイレへの不満、ストレス | 縄張りの主張、発情、不安 |
スプレー行動は、去勢していないオス猫に特に多く見られますが、去勢したオスやメスでも行うことがあります。窓の外の猫を意識している、新しい家族やペットが来た、といった場面で増えることが多いです。スプレー行動の対処法は「猫のスプレー行動をやめさせたい!去勢後も続く原因と今すぐできる対策」でくわしく紹介しています。
粗相した場所の正しい掃除方法
猫が粗相をしてしまったら、できるだけ早く、においを残さないように掃除することが大切です。猫は、自分のおしっこのにおいがする場所を「トイレ」だと認識するため、においが残っていると、同じ場所で繰り返し粗相をするようになってしまいます。

- 吸い取る:ペーパータオルや古いタオルで、こすらずに上から押さえて、おしっこをしっかり吸い取る
- 酵素系の消臭剤を使う:ペット用の酵素系消臭剤をたっぷりかけ、においの元になる成分を分解させる
- しばらく置いてから拭き取る:製品の説明に従って時間を置き、成分がしっかり働いてから拭き取る
- 布製品は洗濯する:カバーやラグなど洗えるものは、洗濯機で洗う。においが残るならもう一度
- 完全に乾かす:湿ったままだと、においが残りやすい
注意したいのが、アンモニアを含む洗剤です。猫のおしっこにはアンモニアに近いにおいがあるため、アンモニア入りの洗剤で掃除すると、猫はかえってそこをトイレだと思ってしまうことがあります。また、塩素系の漂白剤と酸性の洗剤を混ぜると、有毒なガスが発生して危険です。洗剤を混ぜて使うことは絶対にやめましょう。
おしっこのしみは、乾くと目に見えなくなりますが、猫の鼻にはしっかりとわかります。暗い部屋でブラックライト(紫外線ライト)を当てると、おしっこの跡が光って見えるので、見落としがないか確認するのに便利です。
同じ場所での粗相を防ぐ工夫
においをしっかり消したあとも、同じ場所で粗相を繰り返してしまうことがあります。そんなときは、次のような工夫を試してみましょう。
- その場所にトイレを置く:粗相する場所が決まっているなら、一時的にそこへトイレを置き、少しずつ元の位置に戻す
- ごはんや寝床を置く:猫は食事や寝る場所では排泄しにくいので、粗相の場所に食器やベッドを置く
- 入れないようにする:寝室のドアを閉める、ベッドにカバーをかけるなど、物理的に近づけなくする
- 感触を変える:アルミホイルやビニールシートを一時的に敷き、猫が嫌がる感触にする
- 洗濯物を出しっぱなしにしない:飼い主のにおいがする布類は、粗相の対象になりやすい
ただし、これらはあくまで一時的な対策です。粗相の根本的な原因が解決されていなければ、別の場所で粗相をするようになるだけかもしれません。病気、トイレ環境、ストレスのどれが原因なのかを見極めて、原因そのものに対処していくことが大切です。
布団やベッドでの粗相が続く場合は、防水シーツやペット用の防水カバーを使うと、マットレスまでおしっこが染み込むのを防げます。原因を探っている間の被害を減らすためにも、用意しておくと安心です。
やってはいけないNG対応
粗相をされると、ついカッとなって叱りたくなるかもしれません。しかし、次のような対応は、粗相を悪化させる原因になります。
- 叱る・叩く:猫は叱られた理由を理解できず、飼い主を怖がるようになる
- 鼻をおしっこに押しつける:昔からある方法だが、猫に恐怖を与えるだけで効果はない
- トイレに閉じ込める:トイレに嫌な印象がついて、ますます使わなくなる
- 猫の見ている前で大騒ぎする:猫が不安を感じ、ストレスが増える
- 様子を見続ける:病気が原因の場合、受診が遅れると悪化することがある
叱られた猫は、「おしっこをすること自体がいけないこと」と勘違いして、飼い主の見ていない場所で隠れて排泄するようになることがあります。こうなると、粗相の場所を見つけにくくなり、問題がさらに複雑になってしまいます。
粗相を見つけたら、猫を叱らず、黙って淡々と掃除をしましょう。そして、猫がトイレでできたときには、やさしく声をかけてほめてあげてください。猫の問題行動への向き合い方については「猫の問題行動の原因と対策」でも解説しています。
猫の粗相でよくある質問
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Q飼い主の布団にばかりおしっこをするのはなぜですか?
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A布団はやわらかく、おしっこを吸い込むため、砂に近い感触だと感じる猫がいます。また、飼い主のにおいがする場所で排泄することで、安心しようとしていることもあります。膀胱炎などで排尿に痛みがある場合にも、布団で粗相をすることがあるので、まずは動物病院で体の状態を確認してもらいましょう。
-
Qシニア猫が粗相をするようになりました。年のせいですか?
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A年齢とともに、腎臓病や糖尿病でおしっこの量が増えたり、関節炎でトイレの縁をまたぐのがつらくなったりすることがあります。認知機能の低下で、トイレの場所がわからなくなることもあります。年のせいと決めつけず、まずは動物病院で相談しましょう。入り口の低いトイレに替えたり、トイレの数を増やしたりする工夫も役立ちます。
-
Q病院では異常なしと言われましたが、粗相が続きます。
-
Aトイレ環境とストレスの両方を、もう一度見直してみましょう。砂の種類、トイレの大きさや数、置き場所、掃除の頻度を一つずつ変えて、猫の反応を観察します。それでも改善しない場合は、動物の行動に詳しい獣医師に相談すると、家庭の状況に合わせたアドバイスを受けられます。
まとめ:粗相は猫からのサイン。叱らずに原因を探そう
猫がトイレ以外でおしっこをするのは、体の不調やトイレへの不満、ストレスなど、何かを伝えようとしているサインです。叱らずに、一つずつ原因を確認していきましょう。
- 急な粗相は、まず病気を疑う。尿が出ない・少ないならすぐ受診
- 子猫のトイレトレーニングは、寝起き・食後のタイミングを逃さない
- トイレの汚れ、砂、大きさ、場所、数を見直す
- 環境の変化や多頭飼いのトラブルなど、ストレスの原因も探る
- 粗相の跡は酵素系消臭剤でにおいの元から分解する
- 叱る・鼻を押しつけるはNG。黙って掃除し、成功したらほめる
粗相の原因がわかり、猫が再びトイレを使ってくれるようになるまでには、時間がかかることもあります。うまくいかない日があっても、猫を責めずに、猫が安心して排泄できる環境を少しずつ整えていきましょう。

