朝出したごはんが、夜になってもほとんど減っていない。好きなおやつを出しても、においを嗅ぐだけでぷいっと横を向いてしまう。猫がご飯を食べないと、「どこか具合が悪いのかな」「もう少し様子を見てもいいのかな」と不安になりますよね。
猫の食欲不振は、ただの気まぐれのこともあれば、病気のサインのこともあります。そして、猫の場合、「お腹がすいたらそのうち食べるだろう」と何日も様子を見るのは危険です。猫は、食べない状態が数日続くだけで、肝臓に脂肪がたまる「肝リピドーシス」という命に関わる病気を起こすことがあるからです。
この記事では、猫がご飯を食べないときに、何時間までなら様子を見てよいのかの目安を図解し、食べない原因の見分け方、すぐに受診すべきサイン、自宅でできる食欲を戻す工夫、子猫やシニア猫の注意点、受診のときに伝えたいことまで、くわしく解説します。
この記事でわかること
- 猫がご飯を食べないとき、何時間まで様子を見てよいか
- 猫の食欲不振が危険な理由(肝リピドーシス)
- 食べない原因の見分け方と、すぐ受診すべきサイン
- 自宅でできる食欲を戻す工夫
- 子猫・シニア猫の注意点と、受診のときに伝えること
結論:成猫は24時間、子猫・シニアは半日が目安
猫がご飯を食べないときの受診の目安は、猫の年齢や体の状態によって違います。

健康な成猫でも、丸1日(24時間)まったく食べない場合は、受診を考えましょう。2日(48時間)食べない場合は、必ず動物病院を受診してください。子猫は体力の貯えが少なく、半日食べないだけで低血糖や脱水を起こすことがあります。シニア猫や持病のある猫も、体力が落ちているため、早めの受診が大切です。
また、太っている猫は、食べない状態が続くと肝リピドーシスを起こしやすいため、特に注意が必要です。「少し太っているから、ダイエットになってちょうどいい」と考えるのは危険です。
そして、食べないことに加えて、元気がない、吐く、下痢をしている、呼吸が苦しそう、水も飲まない、といった症状がある場合は、時間に関係なく、すぐに動物病院を受診してください。
反対に、少し食べる量が減っただけで、元気もあり、おやつなら食べる、水も飲んでいる、といった場合は、フードに飽きた、暑さで食欲が落ちた、といった理由のこともあります。ただし、その状態が数日続くようなら、一度動物病院で相談しましょう。
「お腹がすいたら食べる」は猫には危険
犬や人間であれば、少しくらい食事を抜いても、それほど大きな問題にはなりません。しかし、猫は体の仕組みが違います。猫が食べない状態が続くと、体はエネルギー不足を補うために、体にたくわえた脂肪を分解して使おうとします。このとき、大量の脂肪が肝臓に運ばれますが、猫の肝臓はそれをうまく処理しきれず、肝臓に脂肪がたまってしまうのです。これが肝リピドーシス(脂肪肝)です。
肝リピドーシスになると、肝臓の働きが悪くなり、さらに食欲がなくなるという悪循環に陥ります。黄疸(皮膚や白目、耳の内側が黄色くなる)、嘔吐、よだれ、ぐったりするといった症状が出て、治療をしなければ命に関わります。特に太っている猫は、数日食べないだけで発症することがあります。
- 太っている猫ほど発症しやすい:体の脂肪が多いぶん、肝臓に運ばれる脂肪も多くなる
- 数日の絶食で起こることがある:「そのうち食べる」と様子を見ている間に進行する
- ほかの病気がきっかけになる:病気で食欲が落ちたことをきっかけに発症することが多い
- 早期に治療すれば回復が期待できる:栄養をしっかりとらせる治療で、多くの猫が回復する
だからこそ、猫がご飯を食べないときは、「わがままだから」「お腹がすけば食べる」と放っておかず、多少甘やかしてでも何とか食べてもらうこと、そして食べない状態が続くなら早めに受診することが大切です。
ご飯を食べない主な原因
猫がご飯を食べない原因は、大きく分けると、体の病気、口の痛み、鼻づまり、ストレス、フードや食器の問題の5つです。

体の病気は、食欲不振の原因として最も注意したいものです。腎臓病、胃腸炎、膵炎、肝臓の病気、甲状腺の病気、腫瘍など、さまざまな病気が食欲の低下を引き起こします。発熱や痛みがあるときも、猫は食べなくなります。
鼻づまりも、意外と多い原因です。猫は食べ物のにおいで、それが食べられるものかどうかを判断しています。猫風邪などで鼻がつまってにおいがわからなくなると、目の前にごはんがあっても、食べようとしなくなることがあります。
ストレスによる食欲不振は、引っ越しや模様替え、来客、新しい猫を迎えたとき、飼い主の留守が長くなったときなどに起こりやすくなります。夏の暑さで食欲が落ちることもあります。
すぐに受診すべき危険なサイン
ご飯を食べないことに加えて、次のような症状がある場合は、様子を見ずにすぐに動物病院を受診してください。夜間や休日でも、救急の動物病院に相談しましょう。
- ぐったりして動かない、呼びかけへの反応が鈍い
- 何度も吐く、水のような下痢が続く
- 口を開けて呼吸している、呼吸が速い・苦しそう
- 水もまったく飲まない、または異常にたくさん飲む
- トイレに何度も行くのに、おしっこが出ない(特にオス猫)
- 皮膚や白目、耳の内側が黄色っぽい(黄疸)
- 体が冷たい、または熱い
- お腹をさわると痛がる、お腹がふくらんでいる
- ひもや異物を飲み込んだかもしれない
特に、オス猫でおしっこが出ていない場合は、尿道が詰まっている可能性があり、命に関わる緊急事態です。また、ひもや輪ゴム、おもちゃの部品などを飲み込んだかもしれない場合も、腸に詰まっているおそれがあるので、すぐに受診してください。
猫は体調の悪さを隠す動物です。「食べない」という変化は、猫が出している数少ないサインのひとつかもしれません。迷ったときは、まず動物病院に電話して、症状を伝えて相談しましょう。
口のトラブルの見分け方
猫が「食べたいのに食べられない」状態になっている場合は、口の中のトラブルが原因かもしれません。次のような様子がないか確認してみましょう。
| 様子 | 考えられること |
|---|---|
| ごはんに近づくが、においを嗅いだだけでやめる | 口の痛み、鼻づまり |
| 食べ始めてすぐに「ギャッ」と鳴いて離れる | 口内炎、歯の痛み |
| 片側の歯だけで噛んでいる、ぽろぽろこぼす | 歯周病、歯が折れている |
| よだれが多い、口のまわりが汚れている | 口内炎、歯周病、口の中の異物 |
| 口臭が強くなった | 歯周病、口内炎、腎臓病 |
| 顔をさわられるのを嫌がる | 口や歯の痛み |
猫は、3歳以上になると多くが歯周病を持っているともいわれます。口内炎は、猫風邪のウイルスや、免疫の異常が関係していることもあり、強い痛みで食べられなくなることがあります。
口の中を無理にのぞこうとすると、痛みで噛まれることもあるので注意しましょう。口のトラブルが疑われる場合は、やわらかいウェットフードやペースト状のフードを与えながら、早めに動物病院で診てもらってください。
フード・食器・環境が原因のとき
病気の心配がなく、元気もある場合は、フードや食器、食べる環境に原因があるかもしれません。次のような点を見直してみましょう。
- フードを急に変えた:猫は食べ慣れないものを警戒する。切り替えは1〜2週間かけて少しずつ
- フードが酸化している:開封から時間がたったドライフードは風味が落ちる。1か月程度で使い切る
- 食器が合っていない:深い器はひげが当たって嫌がる猫も。浅く広い器に
- 食器が汚れている:においが残っていると食べないことも。毎回洗う
- 食べる場所が落ち着かない:トイレの近く、人通りの多い場所、ほかの猫がいる場所は避ける
- おやつのあげすぎ:おやつでお腹がいっぱいになっている、主食よりおやつを待っている
「いつものフードに飽きた」という理由で食べなくなる猫もいます。ただし、フードをしょっちゅう変えていると、猫がどんどん好みにうるさくなり、「食べなければもっとおいしいものが出てくる」と覚えてしまうこともあります。フードを変えるときは、猫の体調や好みを考えながら、計画的に行いましょう。
多頭飼いの場合は、ほかの猫に食事を横取りされていたり、ほかの猫がいて落ち着いて食べられなかったりすることもあります。1匹ずつ離れた場所で食べさせて、誰がどのくらい食べているかを確認しましょう。フードの選び方については「そのキャットフード大丈夫?原材料表示の読み方と失敗しない選び方」で紹介しています。
自宅でできる食欲を戻す工夫
受診までの間や、病院で大きな問題がないとわかったときには、次のような工夫で食欲を取り戻せることがあります。

猫は、においで食べ物を判断するため、香りを立たせることが効果的です。ウェットフードを電子レンジや湯せんで人肌程度(40℃くらい)に温めると、香りが強くなり、食欲を刺激できます。熱すぎるとやけどの原因になるので、必ず温度を確かめてから与えてください。
ドライフードしか食べない猫なら、ぬるま湯で少しふやかすと、香りが立ち、口の痛みがある猫でも食べやすくなります。いつもと違う味のフードや、好物のおやつを少し試してみるのもよいでしょう。
ただし、これらの工夫は、あくまで受診までのつなぎや、一時的な食欲の低下への対処です。工夫をしても食べない場合や、食べる量が少ない状態が続く場合は、必ず動物病院を受診してください。
子猫・シニア猫の注意点
子猫とシニア猫は、成猫に比べて体力の余裕が少なく、食べない状態が体に与える影響が大きくなります。
| 年齢 | 特に注意したいこと | 受診の目安 |
|---|---|---|
| 子猫 | 低血糖・脱水・低体温を起こしやすい。数時間で急変することも | 半日食べない、ぐったりしている |
| シニア猫 | 腎臓病・甲状腺の病気・歯周病・腫瘍などが隠れていることが多い | 半日〜1日食べない、食べる量が数日減っている |
子猫は、体が小さく、エネルギーをたくわえておく力が弱いため、食べない時間が続くと、低血糖を起こしてふるえやけいれんが出ることがあります。子猫がごはんを食べないときは、半日を待たずに、元気の様子を見ながら早めに動物病院に相談しましょう。子猫の危険なサインについては「子猫のこの症状は危険!体重・体温・うんちの正常値と異常サイン早見表」で紹介しています。
シニア猫の食欲不振には、腎臓病や甲状腺機能亢進症、歯周病、腫瘍など、年齢とともに増える病気が隠れていることが多くあります。「年のせいで食が細くなった」と思い込まず、食べる量が減ってきたら、動物病院で検査を受けましょう。シニア猫の変化については「7歳からが分かれ道|シニア猫の見逃しがちな老化サイン」で紹介しています。
シニア猫は、においを感じる力が弱くなって、食欲が落ちることもあります。ウェットフードを温めて香りを強くする、食べやすい大きさの粒のフードに替える、食器の高さを少し上げて食べやすくする、といった工夫も試してみましょう。
受診のときに伝えたいこと
動物病院を受診するときは、次のようなことを伝えられるようにしておくと、診察がスムーズに進みます。メモにまとめておくと安心です。
- いつから食べていないか:最後にしっかり食べたのはいつか
- どのくらい食べているか:まったく食べないのか、少しは食べるのか。おやつは食べるか
- 水は飲んでいるか:量が増えたか、減ったか
- ほかの症状:吐く、下痢、便秘、元気がない、よだれ、くしゃみなど
- おしっことうんちの様子:回数、量、色
- 最近の変化:フードの変更、引っ越し、来客、新しい猫、誤飲の可能性など
- 体重の変化:ふだん量っていれば、その記録も
吐いたものやうんちの写真を撮っておくと、獣医師が状態を判断する手がかりになります。ふだんから体重を量って記録しておくと、少しずつ痩せてきていることにも早く気づけます。
動物病院での検査と治療
動物病院では、まず身体検査で体温や脱水の程度、口の中、お腹の状態などを確認します。必要に応じて、血液検査、尿検査、レントゲン、エコーなどで、食欲不振の原因を探ります。
治療は原因によって違いますが、食べない状態が続いている場合は、原因の治療とあわせて、栄養をとらせるための治療が行われることがあります。
- 点滴:脱水を改善し、体の状態を整える
- 吐き気止め・食欲増進剤:吐き気をおさえたり、食欲を促したりする薬
- 強制給餌:シリンジなどで、流動食を口から少しずつ与える
- 栄養チューブ:食べられない状態が長く続く場合、鼻や首からチューブを入れて栄養を与える
肝リピドーシスを起こしている場合は、しっかり栄養をとらせることが治療の中心になります。数週間にわたってチューブで栄養を与えることもありますが、早めに治療を始めれば、多くの猫が回復します。
自宅で強制給餌を行う場合は、必ず獣医師の指導を受けてからにしましょう。やり方を間違えると、食べ物が気管に入ったり、猫が食事を嫌いになったりすることがあります。
やってはいけないこと
猫がご飯を食べないとき、よかれと思ってしたことが、かえって状態を悪くしてしまうこともあります。次のようなことは避けましょう。
- 何日も様子を見る:肝リピドーシスのリスクがある。特に太った猫は要注意
- 「わがまま」と決めつけて絶食させる:お腹がすけば食べる、は猫では危険
- 人間の食べ物を与える:玉ねぎやチョコレートなど、猫に有害なものもある
- 人間用の薬を飲ませる:猫にとって猛毒になる薬もある
- 無理やり口に押し込む:誤嚥の危険があり、食事を嫌いになる原因にも
猫が食べないと、つい焦っていろいろなものを試したくなりますが、まずは落ち着いて、猫の様子を観察し、必要なら早めに受診することが大切です。飼い主が慌てていると、その緊張が猫にも伝わり、さらに食べにくくなることもあります。
食欲不振に早く気づくための毎日の習慣
猫の食欲の変化に早く気づくためには、ふだんから「どのくらい食べているか」を把握しておくことが大切です。次のような習慣を取り入れてみましょう。
- フードは量をはかって与える:1回ごとにはかっておけば、食べ残しの量で食欲の変化がわかる
- 置きエサをやめ、時間を決めて与える:いつ、どのくらい食べたかがわかりやすくなる
- 月に1回は体重を量る:少しずつ痩せていく変化にも気づける
- 食べ方も観察する:片側で噛む、ぽろぽろこぼす、食べるのに時間がかかるなどの変化に注意
- 水を飲む量もチェック:水の減り方の変化は、腎臓病や糖尿病のサインのことも
- 多頭飼いは1匹ずつ食べさせる:誰がどのくらい食べたかを把握する
置きエサにしていると、猫がいつ、どのくらい食べたのかがわかりにくく、食欲の低下に気づくのが遅れがちです。留守番の時間が長い家庭では、決まった時間に決まった量が出る自動給餌器を使うのもよい方法です。給餌器の選び方は「自動給餌器があれば猫の留守番も安心?」で紹介しています。
体重の記録は、食欲不振の早期発見にとても役立ちます。猫の体重が1年で1割以上減っている場合は、何かの病気が隠れている可能性があります。キッチンスケールや、抱っこして人の体重計で量る方法でもよいので、月に1回は体重を記録しておきましょう。定期的な健康診断もあわせて受けておくと安心です。
猫がご飯を食べないときのよくある質問
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Qおやつは食べるのに、ごはんは食べません。
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Aおやつのほうがおいしく、「ごはんを食べなければおやつがもらえる」と覚えてしまっている可能性があります。元気があり、体重も減っていなければ、おやつを控えて、ごはんの時間を決めて与えてみましょう。ただし、急に食の好みが変わった場合は、口の痛みなどが隠れていることもあるので注意してください。
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Q夏になると食欲が落ちます。大丈夫ですか?
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A暑さで食欲が落ちる猫は少なくありません。エアコンで室温を25〜28℃程度に保ち、涼しく過ごせるようにしてあげましょう。ウェットフードを取り入れると、水分補給にもなります。ただし、食べない状態が1日以上続く、ぐったりしているといった場合は、熱中症やほかの病気の可能性もあるので受診してください。
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Q療法食を食べてくれません。どうすればいいですか?
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A療法食は、栄養を調整しているぶん、食いつきが悪いことがあります。温める、別のメーカーのものを試すなどの工夫をしてみましょう。それでも食べない場合は、何日も絶食させず、獣医師に相談してください。療法食については「猫の療法食は自己判断NG?」で紹介しています。
まとめ:「そのうち食べる」は猫には通用しない
猫がご飯を食べないのは、体調の変化を知らせる大切なサインです。猫は食べない状態が続くと、肝リピドーシスなどの命に関わる病気を起こすことがあるため、早めの対応が大切です。
- 受診の目安は、成猫で24時間、子猫・シニア・持病のある猫は半日〜1日
- 元気がない・吐く・呼吸が苦しいなどがあれば、時間に関係なくすぐ受診
- 太っている猫は肝リピドーシスに特に注意。ダイエットのつもりで放置しない
- 食べたそうなのに食べないときは、口の痛みを疑う
- 温める・器を替える・少量ずつなど、自宅での工夫は受診までのつなぎに
- いつから・どのくらい食べていないかを記録して、受診時に伝える
ふだんから、猫がどのくらい食べているか、体重はどうかを把握しておくと、食欲の変化に早く気づけます。毎日のごはんの時間に、猫の食べる様子を少し気にかけてあげてください。

