友人の家に遊びに行ったら、人見知りだと聞いていた猫が、なぜか自分の膝に乗ってきた。反対に、猫が大好きなのに、どの猫にも逃げられてしまう。「猫は優しい人がわかる」という話を聞くと、猫に好かれる人はうれしく、逃げられる人は少し落ち込んでしまいますよね。
では、猫は本当に「優しい人」を見抜いているのでしょうか。結論からいうと、猫が判断しているのは、人の心の優しさそのものというより、「この人のそばは安全かどうか」だと考えられます。静かでゆっくり動き、じっと見つめず、自分から近づいてこない人。そんな人を、猫は「安心できる相手」と判断して、自分から近づいていくのです。
この記事では、猫と暮らす愛猫家の目線で、猫が寄ってくる人と逃げる人の違い、猫嫌いの人に猫が近づいていく不思議な現象の理由、猫と仲良くなれる「ゆっくりまばたき」の研究、そして初対面の猫へのあいさつ手順までを紹介します。猫に逃げられがちな方も、今日から猫との距離を縮めるヒントが見つかるはずです。
この記事でわかること
- 「猫は優しい人がわかる」は本当なのか
- 猫が寄ってくる人と逃げる人の違い
- 猫嫌いの人に猫が寄っていく理由
- 猫と仲良くなれる「ゆっくりまばたき」の研究
- 初対面の猫へのあいさつ手順
結論:猫が見ているのは「優しさ」より「安心できるかどうか」
最初に、この記事の結論をまとめます。
- 猫は、人の「安全さ」をしぐさ・声・においから判断している:心の優しさを直接見抜いているというより、ふるまいから「怖くない人」を選んでいると考えられます
- 猫が寄ってくるのは、静かでゆっくり動き、見つめず、近づいてこない人:猫にとって、自分のペースで相手を確かめられる人が安心できる相手です
- 猫嫌いの人に猫が寄っていくのは、ふるまいが「理想の安心できる人」だから:見ない、近づかない、静か。それがまさに猫の好むふるまいなのです
- 猫好きでも、ふるまいを変えれば好かれるようになる:ゆっくりまばたき、しゃがむ、待つ。この3つだけで、猫の反応は変わります
つまり、猫に好かれるかどうかは、生まれ持った「優しさ」で決まるわけではありません。猫の気持ちを知り、猫にとって安心できるふるまいを身につければ、誰でも猫と仲良くなれるのです。
「猫は優しい人がわかる」は本当?
「猫は優しい人を見抜く」「動物に好かれる人に悪い人はいない」。こうした言葉は、昔からよく語られてきました。でも、猫が人の心の中の優しさを直接感じ取っているのかどうかは、科学的にはっきりとはわかっていません。
一方で、猫が人を観察し、相手によって態度を変えていることは、多くの研究や飼い主の経験からわかっています。たとえば、猫は飼い主の声を知らない人の声と聞き分けたり、飼い主の表情や声の調子に合わせて行動を変えたりすることが報告されています。猫は、私たちが思っている以上に、人のことをよく見ているのです。
ただし、猫が見ているのは、人の性格や心の優しさそのものではなく、その人のしぐさ、声、におい、動き方といった、目に見える、耳に聞こえる、鼻で感じられる情報です。猫は、それらの情報から、「この人は自分に危害を加えないか」「逃げ道をふさいでこないか」を判断していると考えられます。
結果として、穏やかで落ち着いた人、相手のペースを尊重できる人が、猫に好かれやすくなります。そうした人は、人間同士の関係でも「優しい人」と感じられることが多いので、「猫は優しい人がわかる」と言われるようになったのかもしれません。
猫が寄ってくる人・逃げる人の違い
では、猫はどんな人に寄っていき、どんな人から逃げるのでしょうか。その違いを比べてみましょう。

猫が寄ってくる人に共通するのは、猫にとって「予測できる」「怖くない」存在であることです。ゆっくり動く人は、次に何をするかが予測しやすく、猫は安心して様子を見ることができます。低めの穏やかな声も、猫を緊張させません。
反対に、猫に逃げられやすいのは、猫好きな人に多いふるまいでもあります。「かわいい〜!」と甲高い声を上げて近づく、じっと見つめる、すぐに手を伸ばして触ろうとする。猫が大好きだからこその行動ですが、猫からすると、大きな生き物が急に迫ってくるのは、恐怖以外の何ものでもありません。
また、猫はとても鼻がいい動物です。香水や柔軟剤、たばこなどの強いにおいは、猫にとって不快に感じられることがあります。特に、柑橘系のにおいを苦手とする猫は多いといわれています。猫に好かれたいなら、猫に会う日は、においの強いものを控えるのもひとつの方法です。
猫が人を見るときにチェックしているポイント
猫は、初めて会った人を、どのようなポイントで判断しているのでしょうか。猫の感覚の特徴とあわせて整理してみます。
| 猫が見ているポイント | 安心できる人 | 警戒される人 |
|---|---|---|
| 視線 | 目をそらす・ゆっくりまばたき | じっと見つめ続ける |
| 動き | ゆっくり、予測しやすい | 急に動く、手を振り回す |
| 距離の詰め方 | 猫が近づくのを待つ | 自分から近づき、追いかける |
| 姿勢 | しゃがむ、座っている | 立ったまま上から見下ろす |
| 声 | 低めで穏やか、小さめ | 甲高い、大きい、早口 |
| におい | 強いにおいがない | 香水・たばこ・柑橘系が強い |
特に大切なのが、視線です。猫の世界では、相手をじっと見つめることは「ケンカを売っている」という意味になります。猫同士がケンカをするときは、互いに目をそらさずににらみ合います。だから、猫をじっと見つめる人は、猫にとって「敵意のある相手」に見えてしまうのです。
そして、姿勢も見落とせません。猫にとって、人間は自分の何倍も大きな生き物です。立ったまま上から見下ろされると、それだけで圧迫感を感じます。しゃがんで体を小さくするだけで、猫の警戒心はぐっと下がります。
猫は、これらのポイントを一瞬で見極めて、「この人は大丈夫そう」「この人は危ないかも」と判断しています。逆にいえば、これらのポイントを意識するだけで、猫に安心してもらえる人になれるということです。
猫が猫嫌いの人に寄っていく理由
猫好きにとって、なんとも悔しいのが、「猫が嫌いな人、猫アレルギーの人に限って、猫が寄っていく」という現象です。猫が苦手な人の膝にわざわざ乗る、猫好きには見向きもしないのに、猫に興味のない人にすり寄っていく。なぜこんなことが起きるのでしょうか。

その理由は、猫嫌いの人のふるまいにあります。猫が苦手な人は、猫と目を合わせないようにし、自分から近づくこともなく、じっと静かにしています。実はこれこそが、猫にとって理想的な「安心できる人」のふるまいなのです。
猫は、自分のペースで相手を確かめたい動物です。見つめてこず、近づいてもこない相手なら、猫は安心して近づき、においを嗅いで、どんな相手かを確かめることができます。猫嫌いの人は、猫が好きではないからこそ、偶然にも猫の好むふるまいをしているのです。
逆に、猫好きの人は、猫を見つけると目を輝かせて見つめ、手を伸ばし、近づいていきます。猫からすると、「なんだかこの人、ぐいぐい来る」と感じて、距離を取りたくなってしまうのです。猫に好かれたいなら、猫嫌いの人のふるまいを見習うのが、実は一番の近道かもしれません。
猫と仲良くなれる「ゆっくりまばたき」の研究
猫と仲良くなる方法として、科学的に確かめられているのが、「ゆっくりまばたき」です。
イギリスのサセックス大学とポーツマス大学の研究チームは、2020年に、猫と人のまばたきに関する研究を発表しました。飼い主が猫に向かって目を細め、ゆっくりとまばたきをすると、猫も同じようにゆっくりまばたきを返すことが多いことが、実験で確かめられたのです。
さらに、この研究では、初対面の研究者が猫に対してゆっくりまばたきをしてから手を差し出すと、何もしないときに比べて、猫が近づいてくる可能性が高くなることもわかりました。つまり、ゆっくりまばたきは、猫に「敵意はないよ」「あなたに好意を持っているよ」と伝える合図になっていると考えられるのです。
猫がゆっくりまばたきをするのは、リラックスしているとき、相手に心を許しているときだといわれています。目を閉じるということは、その間は相手を見ていないということ。つまり、「あなたの前なら、目を閉じても安心」という、信頼のサインなのです。
- やり方:猫と目が合ったら、目を半分くらいまで細め、ゆっくりと目を閉じて、またゆっくり開く
- ポイント:笑顔のように目を細めるイメージで。1〜2秒かけて閉じる
- その後:少し視線をそらして、猫の反応を待つ
- 猫が返してくれたら:猫もあなたに心を許しているサイン
ゆっくりまばたきは、初対面の猫だけでなく、一緒に暮らしている猫にも効果的です。猫と目が合ったときに、ぜひ試してみてください。猫がゆっくりまばたきを返してくれたら、それは猫からの「大好き」の合図かもしれません。
初対面の猫へのあいさつ手順
初めて会う猫と仲良くなりたいときは、次の手順であいさつしてみましょう。

まずは、しゃがんで体を小さくし、猫と同じ目線の高さになることから始めます。立ったまま見下ろすと、猫は圧迫感を感じてしまいます。そして、猫と目が合ったら、ゆっくりまばたきをして、敵意がないことを伝えましょう。
次に、自分からは近づかず、猫が近づいてくるのを待ちます。猫が興味を持って近づいてきたら、人差し指をそっと猫の鼻先に差し出してみてください。これは、猫同士が鼻と鼻をくっつけてあいさつするのをまねた方法です。猫が指のにおいを嗅ぎ、顔をこすりつけてきたら、あいさつを受け入れてくれたサインです。
そこで初めて、頬やあごの下を、数秒だけ優しく撫でてみましょう。猫がもっと撫でてほしそうなら、少しずつ時間を延ばします。途中で猫が離れていったら、追いかけずにそこで終わりにするのが、次につながるコツです。
猫の気持ちがわかるサイン
猫と仲良くなるためには、猫が今どんな気持ちでいるのかを知ることも大切です。猫は、しっぽや耳、体の姿勢で、気持ちを表現しています。
| サイン | 猫の気持ち | どうすればいい? |
|---|---|---|
| しっぽをピンと立てて近づく | 親しみ・あいさつ | 指先を差し出してあいさつ |
| ゆっくりまばたき | リラックス・信頼 | ゆっくりまばたきを返す |
| 体や顔をこすりつける | 仲間だと認めている | 頬やあごを優しく撫でる |
| 耳を横や後ろに倒す | 不安・警戒 | 距離をとり、そっとしておく |
| しっぽを大きく振る・床に打ちつける | イライラ | 撫でるのをやめて離れる |
| 体を低くしてしっぽを巻き込む | 恐怖 | 静かにその場を離れる |
| 背中を丸めて毛を逆立てる | 強い警戒・威嚇 | 近づかず、刺激しない |
猫が不安や警戒のサインを見せているときは、無理に近づいたり触ったりせず、そっとしておくのが一番です。猫が落ち着いて、自分から近づいてくるまで待ちましょう。反対に、しっぽを立てて近づいてきたり、体をこすりつけてきたりしたら、あいさつや撫でられるのを受け入れてくれているサインです。
猫のサインを読み取れるようになると、猫がどうしてほしいのかがわかるようになり、猫との関係はぐっと良くなります。猫に好かれる接し方については、「猫に嫌われる飼い主・好かれる飼い主の違い|信頼関係を築く7つの習慣」でも詳しく紹介しています。
猫に逃げられやすい人が今日からできること
「猫が大好きなのに、いつも逃げられてしまう」という方は、次のことを意識してみてください。
- 猫を見つけても、すぐに近づかない:まずはその場で立ち止まり、しゃがんで待つ
- 「かわいい!」の声を抑える:心の中で叫んで、声は小さく穏やかに
- 見つめたくなったら、ゆっくりまばたき:じっと見つめる代わりに、まばたきで好意を伝える
- 手は上からではなく、下から:頭の上に手をかざさず、低い位置から指先を差し出す
- 猫が離れても追わない:追わないことが、次に来てくれる近道
- においの強いものは控える:猫に会う日は、香水や柔軟剤を控えめに
猫好きの人ほど、猫を前にすると気持ちがはやってしまうものです。でも、猫が求めているのは、熱烈な歓迎ではなく、静かに待ってくれる相手です。「猫嫌いの人のようにふるまう」ことを意識するだけで、猫の反応は驚くほど変わるはずです。
猫によって「人の好み」は違う
ここまで、猫に好かれやすいふるまいを紹介してきましたが、猫の性格は一匹一匹違います。同じようにふるまっても、すぐに寄ってくる猫もいれば、何度会っても隠れてしまう猫もいます。
子猫のころに、いろいろな人に優しく触れられて育った猫は、初対面の人にも物おじせずに近づいていくことが多いといわれます。反対に、人とあまり触れ合わずに育った猫や、過去に怖い経験をした猫は、慎重で、人に慣れるまでに時間がかかります。
また、猫にも「好みのタイプ」があるようです。女性や子どもの高い声が好きな猫もいれば、男性の低い声のほうが落ち着く猫もいます。いつも世話をしてくれる人に一番なつく猫もいれば、あまりかまってこない家族を好む猫もいます。
だから、猫に逃げられたからといって、「自分は優しくないんだ」と落ち込む必要はまったくありません。その猫が慎重な性格だっただけかもしれませんし、たまたまその日の気分が乗らなかっただけかもしれません。一緒に暮らしている猫がなかなか懐いてくれない場合は、「猫が懐かないとイライラ…無視は逆効果?懐かない原因と距離を縮める方法」も参考にしてみてください。
猫に好かれる人は、人にも好かれる?
猫に好かれるふるまいを振り返ってみると、それは人間関係にも通じるものがあることに気づきます。
- 相手をじっと見つめず、適度な距離感を保つ
- 相手のペースを尊重し、無理に踏み込まない
- 穏やかな声で、落ち着いて話す
- 相手が近づいてきてくれるのを待てる
- 相手が嫌がることをしない
こうしたふるまいができる人は、人間同士でも「一緒にいて安心できる人」と感じられることが多いでしょう。猫が「優しい人」を見抜いているように見えるのは、猫に好かれるふるまいと、人に優しいふるまいが、よく似ているからなのかもしれません。
猫と暮らすことで、相手の気持ちを察する力や、待つ力が育つともいわれます。猫飼いの性格については、「「猫飼ってる人は性格悪い」は偏見?研究でわかった猫飼いの本当の性格」でも詳しく紹介しています。
猫のいる家に遊びに行くときのコツ
友人や恋人の家で初めて猫に会うときは、猫にとって「自分の縄張りに知らない人がやって来た」状態です。猫を怖がらせず、仲良くなるきっかけをつくるために、次のことを意識してみましょう。
まず、家に入ったら、猫を探して追いかけたりせず、ソファや床に座って落ち着きましょう。猫は、新しい来客をしばらく物陰から観察しています。静かに座って飼い主と話しているうちに、猫のほうから「どんな人だろう」と様子を見に来てくれることがよくあります。
猫が近づいてきても、いきなり撫でようとせず、まずは指先のにおいを嗅がせるあいさつから。飼い主に猫の好きな撫でられ方や、触られるのが苦手な場所を聞いておくと安心です。飼い主の許可があれば、猫じゃらしで少し遊ばせてもらうのも、距離を縮める良い方法です。
そして、帰るときに猫が見送りに来てくれたら、それは大成功のサイン。次に遊びに行ったときには、もっと早く近づいてきてくれるかもしれません。猫は、一度「安心できる人」と覚えた相手のことを、ちゃんと覚えているものです。
猫に好かれる人についてよくある質問
-
Q猫に逃げられるのは、私が優しくないからでしょうか?
-
Aいいえ、そんなことはありません。猫は人の心の優しさを直接見抜いているわけではなく、しぐさや声、においなどから「安全かどうか」を判断していると考えられます。猫好きの人ほど、つい見つめたり近づいたりしてしまい、逃げられやすくなります。ふるまいを少し変えるだけで、猫の反応は変わりますよ。
-
Qゆっくりまばたきは、どの猫にも効果がありますか?
-
A研究では、飼い猫だけでなく初対面の猫でも、ゆっくりまばたきをすると猫が近づいてくる可能性が高まることが報告されています。ただし、猫の性格やその時の気分によって反応はさまざまです。すぐに反応がなくても、焦らず何度か試してみてください。
-
Q野良猫にも同じ方法で近づいていいですか?
-
A野良猫は人を強く警戒していることが多く、驚かせると引っかかれたり噛まれたりすることがあります。また、感染症のリスクもあるので、むやみに触るのは避けましょう。遠くからゆっくりまばたきをして、見守るくらいにとどめておくのが安心です。地域のルールによっては、エサやりが禁止されている場所もあります。
まとめ:猫に好かれるカギは「優しさ」より「安心感」
「猫は優しい人がわかる」と言われますが、猫が見ているのは、人の心の中よりも、その人のふるまいです。
- 猫は、しぐさ・声・においから「安全な人かどうか」を判断している
- 寄ってくるのは、静かでゆっくり動き、見つめず、近づいてこない人
- 猫嫌いの人に猫が寄っていくのは、ふるまいが猫にとって理想的だから
- ゆっくりまばたきは、猫に好意を伝える合図になると研究で確かめられている
- 初対面の猫には、しゃがむ・まばたき・待つ・指先を差し出す、の順で
- 猫によって性格も好みも違う。逃げられても落ち込まなくていい
次に猫に会ったときは、まずしゃがんで、ゆっくりまばたきをしてみてください。猫がまばたきを返してくれたら、それはあなたが「安心できる人」だと認められた証です。

