「猫を嫌う人には気をつけろ」。ネットやSNSで、こんな言葉を見かけたことはありませんか。猫好きの間では、半ば冗談として、ときには本気で語られることもある言葉です。猫が苦手な人にとっては、「猫が嫌いなだけで、危ない人扱いされるの?」と、なんとも納得のいかない言葉でしょう。
猫と暮らす愛猫家として、この記事でははっきりとお伝えします。「猫が苦手」ということと、「動物に危害を加える」ということは、まったく別のものです。猫が苦手な人を、それだけで疑ったり警戒したりする根拠はありません。
一方で、動物を傷つける「動物虐待」は、法律で罰せられる犯罪です。そして海外では、動物虐待と人への暴力との関連を指摘する研究も数多くあります。つまり、本当に気をつけるべきなのは、「猫が嫌い」という感情ではなく、「動物に危害を加える」という行動なのです。この記事では、この俗説の真相と、本当に気をつけるべき動物虐待のサイン、そして虐待を見つけたときの通報・相談先までを解説します。
この記事でわかること
- 「猫を嫌う人には気をつけろ」という言葉の由来と真相
- 「猫が苦手」と「動物虐待」の違い
- 動物虐待と人への暴力の関連を指摘する研究
- 動物愛護管理法で定められた罰則
- 虐待を疑うサインと、見つけたときの通報・相談の流れ
結論:猫嫌いを疑う根拠はない。気をつけるべきは「虐待」という行動
最初に、この記事の結論をまとめます。
- 「猫を嫌う人は危ない」という科学的な根拠はない:猫が苦手な理由は、怖い、アレルギーがある、過去の経験など、ごく普通のものです
- 「苦手」と「虐待」はまったく別:猫を避けるのは自由。でも、猫を傷つけることは、誰であっても許されません
- 動物虐待は犯罪であり、人への暴力との関連も指摘されている:動物愛護管理法で厳しく罰せられ、海外では社会全体で警戒すべきサインとされています
- 虐待を見つけたら、直接注意せず、記録して警察や自治体へ:自分の安全を守りながら、専門機関に任せることが大切です
猫好きが「猫嫌いは危ない」と決めつけることは、猫が苦手な人を傷つけるだけでなく、本当に警戒すべき虐待から目をそらすことにもなりかねません。正しい線引きを知って、猫と人の両方を守っていきましょう。
「猫を嫌う人には気をつけろ」の由来
「猫を嫌う人には気をつけろ」という言葉は、英語の「Beware of people who dislike cats.」の訳として紹介されることが多く、アイルランドのことわざだといわれています。ただ、その正確な出どころははっきりしていません。
この言葉が広まった背景には、「動物に優しい人は、人にも優しい」「動物を大切にしない人は、人も大切にしない」という、昔からある考え方があるのでしょう。猫好きの間で、猫を大切にしない人への警戒心を表す言葉として、半ば冗談まじりに使われてきたようです。
しかし、ことわざや格言は、あくまで昔の人の経験や感覚から生まれたものです。「猫を嫌う人」とひとくくりにしてしまうと、猫が怖い人、アレルギーがある人、単純に興味がない人まで、すべて「危ない人」に含まれてしまいます。これは明らかに行き過ぎた決めつけです。
猫好きの私自身、この言葉をそのまま信じることはできません。猫が苦手でも、優しくて誠実な人はたくさんいます。反対に、猫好きを名乗っていても、無責任な飼い方をして猫を不幸にしている人もいます。猫が好きか嫌いかで、人の善悪は決まらないのです。
また、ことわざは時代や文化の中で生まれたものなので、今の日本の暮らしにそのまま当てはまるとは限りません。猫と暮らす人が増え、猫アレルギーや猫への苦手意識についても理解が広がってきた今こそ、昔の言葉をうのみにせず、目の前の人をきちんと見ることが大切なのではないでしょうか。
「猫が苦手」と「動物虐待」はまったく別
「猫を嫌う人には気をつけろ」という言葉を考えるうえで、いちばん大切なのは、「猫が苦手」という感情と、「動物を傷つける」という行動を、はっきり分けて考えることです。

猫が苦手な人は、猫に近づかない、猫を避けるといった行動をとります。その理由は、子どものころに引っかかれた、猫アレルギーがある、動きが予測できなくて怖い、野良猫のフン害に困った経験があるなど、ごく普通のものです。猫が苦手な理由について詳しくは「猫が嫌い・気持ち悪いと感じる理由|猫嫌いの心理を愛猫家が本気で考えてみた」で解説しています。
一方、動物虐待は、猫を傷つける、殺す、エサや水を与えずに衰弱させる、捨てるといった、動物に危害を加える行動です。これは「好き嫌い」の問題ではなく、法律で罰せられる犯罪です。
大切なのは、「嫌い」という感情は誰にも迷惑をかけないが、「危害を加える」という行動は許されないということです。猫が苦手な人の多くは、猫に危害を加えたりしません。ただ静かに距離をとっているだけです。そうした人を「危ない人」扱いするのは、明らかな偏見なのです。
動物虐待と人への暴力の関連を指摘する研究
「猫を嫌う人」を疑う根拠はありませんが、「動物を虐待する人」については、海外で多くの研究が行われています。
欧米では、動物虐待と、家庭内暴力や児童虐待など人への暴力との間に関連があることを指摘する研究が、数多く発表されてきました。こうした関連は「リンク」と呼ばれ、動物虐待を、人への暴力の兆候や、同じ家庭で起きている暴力のサインとして捉える考え方が広がっています。
たとえば、アメリカの連邦捜査局(FBI)は、2016年から動物虐待を独立した犯罪として全国の犯罪統計に集計するようになりました。動物虐待を「小さな問題」として見過ごさず、社会全体で警戒すべき行為として扱うようになってきているのです。
日本でも、過去に社会を震撼させた事件の中に、犯人が事件の前に動物を傷つけていたケースがあったことが報じられています。もちろん、動物を虐待した人が必ず人に危害を加えるわけではありません。でも、動物虐待を見過ごさないことが、動物だけでなく、人を守ることにもつながる可能性があるのです。
ここで改めて強調しておきたいのは、これらの研究が示しているのは「動物を虐待する行動」と人への暴力の関連であり、「猫が嫌い」という感情との関連ではないということです。「猫を嫌う人には気をつけろ」という言葉は、本来、「動物に危害を加える人には気をつけろ」と言い換えるべきなのかもしれません。
動物虐待は犯罪。動物愛護管理法の罰則
日本では、動物の愛護及び管理に関する法律(動物愛護管理法)で、動物への虐待や遺棄が禁止されています。2019年の法改正で罰則が強化され、厳しく罰せられるようになりました。
| 行為 | 罰則 |
|---|---|
| 愛護動物をみだりに殺す・傷つける | 5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金 |
| エサや水を与えず衰弱させるなどの虐待 | 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 |
| 愛護動物を捨てる(遺棄) | 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 |
※罰則は環境省や自治体の案内をもとに作成。刑法の改正により、以前の「懲役」は「拘禁刑」に改められています
ここでいう「愛護動物」には、飼い猫だけでなく、野良猫も含まれます。飼い主がいない猫であっても、傷つけたり殺したりすれば、犯罪として罰せられるのです。「野良猫だから何をしてもいい」ということは、決してありません。
また、猫に毒入りのエサを与える、わなを仕掛けて捕まえて傷つける、エアガンで撃つといった行為も、虐待にあたります。野良猫の被害に困っていたとしても、猫を傷つける方法は、法律で禁じられている犯罪行為です。
本当に気をつけるべき動物虐待のサイン
では、本当に気をつけるべき動物虐待のサインには、どのようなものがあるのでしょうか。次のようなことに気づいたら、注意が必要です。

特に注意したいのは、同じ地域で、けがをした猫が続けて見つかるケースです。交通事故やケンカによるけがとは違い、切り傷ややけど、エアガンで撃たれたような傷など、不自然な傷がある場合は、人為的な虐待が疑われます。
また、毒入りと思われるエサや、不審な薬品が置かれている場合も要注意です。猫が不自然な死に方をしていたり、何匹も続けて死んでいたりする場合は、毒物による虐待の可能性があります。こうした場合、猫だけでなく、散歩中の犬や、小さな子どもが誤って口にしてしまう危険もあります。
最近では、SNSで動物を傷つける様子を投稿するケースも問題になっています。動物を虐待する動画や画像を見つけた場合は、拡散せずに、警察に通報しましょう。
ただし、ひとつのサインだけで、特定の人を虐待の犯人だと決めつけるのは避けてください。猫のけがは、交通事故や猫同士のケンカ、病気によることもあります。大切なのは、状況を冷静に記録し、専門機関に相談することです。
虐待を見つけたときの通報・相談の流れ
もし、動物虐待の現場を目撃したり、虐待が疑われる状況に気づいたりしたら、次の流れで対応しましょう。

いちばん大切なのは、自分の安全を最優先にすることです。虐待をしている人に、直接注意したり、問い詰めたりするのは危険です。トラブルに巻き込まれたり、自分がけがをしたりするおそれがあります。
次に、できるだけ詳しく記録を残すことが大切です。日時、場所、状況をメモし、安全に撮影できる場合は写真や動画を撮っておきましょう。けがをした猫や、不審なエサの写真も、証拠として役に立ちます。
今まさに虐待が行われているなど、緊急の場合は、迷わず110番に通報してください。緊急でない場合は、最寄りの警察署に相談しましょう。また、自治体の動物愛護センターや保健所でも、動物虐待に関する相談を受け付けています。
飼い猫が被害にあったかもしれないときは
もし、自分の飼い猫が不自然なけがをして帰ってきた、急に具合が悪くなったという場合は、次のように対応しましょう。
まず、何よりも先に、動物病院で診てもらうことです。毒物を口にした可能性がある場合は、時間との勝負になることもあります。症状や、猫が外にいた時間、心当たりのあることを、できるだけ詳しく獣医師に伝えてください。獣医師の診断書やカルテは、虐待を訴える際の大切な証拠にもなります。
次に、けがの写真や、猫が見つかった場所の様子を記録しておきましょう。不審なエサや物が落ちていた場合は、素手で触らずに写真を撮り、可能であれば袋に入れて保管しておきます。そのうえで、警察に相談してください。
そして、同じ被害を繰り返さないために、これを機に完全室内飼いに切り替えることを強くおすすめします。外に出たがる猫でも、キャットタワーや窓辺の特等席、遊びの時間を増やすことで、室内の暮らしに慣れていくことができます。近所の猫好きや地域猫の世話をしている人と情報を共有することも、地域の猫を守ることにつながります。
相談先の一覧
動物虐待や、猫をめぐるトラブルに困ったときの主な相談先をまとめました。
| こんなとき | 相談先 |
|---|---|
| 今まさに虐待が行われている | 110番に通報 |
| 虐待が疑われる状況がある | 最寄りの警察署、警察相談専用電話(#9110) |
| けがをした猫を見つけた | 近くの動物病院、自治体の動物愛護センター |
| 地域で猫の不審死が続いている | 警察署、保健所、動物愛護センター |
| SNSで虐待動画を見つけた | 警察(拡散せずに通報) |
| 野良猫の被害に困っている | 自治体の相談窓口、保健所 |
警察相談専用電話の「#9110」は、緊急ではないけれど警察に相談したいことがあるときに使える番号です。動物虐待が疑われるけれど、確信が持てないという場合は、まずこちらに相談してみるのもよいでしょう。
また、動物愛護団体の中には、動物虐待に関する情報提供を受け付けているところもあります。自治体や警察への相談の仕方がわからない場合は、こうした団体に相談してみるのもひとつの方法です。
地域猫・外の猫を虐待から守るために
動物虐待の被害にあいやすいのは、外で暮らす猫です。飼い猫を外に出していたり、地域猫の世話をしていたりする方は、次のことを心がけましょう。
- 飼い猫は完全室内飼いにする:外に出さないことが、虐待や事故から猫を守る最大の対策
- マイクロチップや迷子札をつける:万が一脱走したときに、飼い主のもとに戻れるように
- 地域猫の様子をよく観察する:いつもの猫がいない、けがをしているなどの変化に気づけるように
- 地域のルールを守った活動をする:エサやりやトイレの管理で近隣とのトラブルを防ぐことが、猫を守ることにつながる
- 異変に気づいたら記録して相談する:ひとりで抱え込まず、警察や自治体に相談する
特に大切なのは、飼い猫を外に出さないことです。外で暮らす猫は、虐待だけでなく、交通事故や感染症、猫同士のケンカなど、さまざまな危険にさらされています。飼い猫を守るために、完全室内飼いを徹底しましょう。脱走を防ぐ工夫は「猫の脱走は一瞬で起きる!玄関・窓・ベランダの脱走防止対策とおすすめグッズ」で、脱走してしまったときの備えは「猫が脱走・迷子になったらすぐやること|マイクロチップ・GPS・迷子札の備え」で詳しく紹介しています。
また、地域猫をめぐって近隣とのトラブルが起きると、猫に対する反感が強まり、猫が危険にさらされることにもなりかねません。地域のルールを守り、近隣の人の理解を得ながら活動することが、結果的に猫を守ることにつながります。
猫好きが「猫嫌い」を決めつけないために
最後に、猫好きの方にお伝えしたいことがあります。「猫を嫌う人には気をつけろ」という言葉を、そのまま人に当てはめるのは、やめにしませんか。
猫が苦手な人の多くは、猫に危害を加えたりしません。ただ、怖い、アレルギーがある、興味がないといった理由で、猫と距離をとっているだけです。そうした人を「危ない人」扱いすることは、その人を深く傷つけ、猫好きへの反感を強めることにもなります。
そして、「猫嫌い=危ない」という決めつけは、本当に警戒すべき動物虐待から目をそらすことにもつながりかねません。虐待をする人の中には、表向きは動物好きを装っている人もいるかもしれません。大切なのは、「好きか嫌いか」という感情ではなく、「動物にどう接しているか」という行動を見ることです。
猫が苦手な人が猫好きの前で言い出しにくい気持ちについては「「猫嫌い」と言えない人へ|猫好きに囲まれてつらいときの角が立たない伝え方」でも考えています。猫好きと猫が苦手な人が、お互いを尊重し合える関係をつくっていきたいものです。
猫が苦手な人も、動物虐待には反対している
忘れてはならないのは、猫が苦手な人も、動物虐待には反対しているということです。猫が苦手だからといって、猫が傷つけられていいと思っている人はほとんどいません。
実際に、猫が苦手でも、けがをした野良猫を見つけて動物病院に連れて行ったり、虐待の現場を見かけて通報したりする人もいます。「猫が好きかどうか」と「動物の命を大切に思うかどうか」は、別の問題なのです。
動物虐待をなくすためには、猫好きも、猫が苦手な人も、立場を超えて協力することが大切です。虐待のサインに気づいたら、誰もが声を上げられる。そんな社会になれば、猫も人も、もっと安心して暮らせるようになるはずです。
子どもたちに、命の大切さや、動物との適切な接し方を伝えていくことも大切です。「猫が苦手なら近づかなくていい。でも、いじめたり傷つけたりしてはいけない」。そんなシンプルなルールを、家庭や学校で伝えていくことが、将来の動物虐待を防ぐことにつながります。猫好きの大人も、猫が苦手な大人も、その点ではきっと同じ思いを共有できるはずです。
あわせて読みたい
「猫を嫌う人」と動物虐待についてよくある質問
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Q猫が嫌いな人とは、付き合わないほうがいいですか?
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A猫が嫌いというだけで、付き合いを避ける必要はまったくありません。猫が苦手な理由は、怖い、アレルギーがあるなど、ごく普通のものです。気をつけるべきなのは、猫が嫌いかどうかではなく、動物を傷つけるような行動をとるかどうかです。
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Q野良猫を追い払うのも虐待になりますか?
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A猫を傷つけない方法で、庭に入らないようにしたり、追い払ったりすることは、虐待にはあたりません。猫よけグッズを置く、フェンスのすき間をふさぐなどの方法があります。ただし、猫をたたく、物を投げつける、毒をまくといった、猫を傷つける方法は虐待にあたり、犯罪となります。
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Q虐待かどうか確信が持てません。通報してもいいですか?
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A確信が持てなくても、気になることがあれば、警察相談専用電話(#9110)や自治体の動物愛護センターに相談してかまいません。見たことをそのまま伝え、判断は専門機関に任せましょう。ただし、特定の人を犯人だと決めつけて、SNSなどで名前をさらすのは避けてください。
まとめ:気をつけるべきは「猫嫌い」ではなく「動物への危害」
「猫を嫌う人には気をつけろ」という言葉は、そのまま信じるべきものではありません。本当に気をつけるべきなのは、動物に危害を加えるという行動です。
- 「猫を嫌う人は危ない」という科学的な根拠はない
- 「猫が苦手」は好き嫌いの問題で、誰にも害はない。「虐待」は犯罪
- 海外では、動物虐待と人への暴力の関連を指摘する研究が数多くある
- 愛護動物(野良猫を含む)を殺傷すると5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金
- 虐待を疑うサインに気づいたら、直接注意せず、記録して警察や自治体に相談
- 飼い猫は完全室内飼いで守る。猫好きも猫が苦手な人も、虐待には一緒に反対できる
猫が好きな人も、苦手な人も、動物の命を大切に思う気持ちは同じです。「猫嫌い」を決めつけるのではなく、虐待のサインに目を向けること。それが、猫と人の両方を守るいちばんの方法です。

